終天に巡り逢うⅣ (ページ37)

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番外編３ページ37

『んー…』

吸血鬼になって、自分の力は如何程なのかとふと思う。
ウルド様の血で吸血鬼化したから…十位くらいだろうか。

『ウルド様』

「なんだ」

隣で興味なさそうに本をめくっていたウルド様に声をかける。
というか近い。

『私って、どれくらいの強さなんでしょうか』

「…ああ…そういえばそうだな。貴族の位が欲しいのか？」

『いや別に要りませんが…まぁでも気になるので』

瑚月の力を借りてアリシアを瀕死には追い込んだが、いまはその時と状況が違う。
だが確か第二位の血で吸血鬼化すると九位か十位くらいではないかと思うのだが。生きた年数的に。永く生きれば七位くらいにはなるのだろうか。

「一度確認しておくか…ちょうど武器も出来上がっているしな」

『え？』

ウルド様は立ち上がって奥から細長い木箱を持ってくる。
それを私の目の前に置くと、ぱかりと開けた。

『…刀、？』

吸血鬼の武器としては珍しい…というかおそらくない形状のその武器は、馴染みのある刀だった。

「レイピアなどより、使い慣れた形の方がいいだろう」

『、ありがとうございます』

すらりと刀身を抜き出す。通常の刀とは違い、刃は透明なものだった。

『これも血を吸わせるんですか？』

「ああ」

『じゃあ…血を吸え』

パシュッと音を立てて柄から棘が出てきて私の掌を貫く。痛くないけど。
と、思うと同時に身体が軽くなる。視界が更にクリアになる。感覚が研ぎ澄まされる。

『うっわ、…見えすぎて…なんか酔いそうです』

「すぐに慣れる。…A」

『はい、？』

手を掬われる。
それをウルド様は自分の口元へと持っていき、そして。

『っひ、！？』

ぺろり、と掌を舐めた。
思わず反射的に手を引っ込めようとしたが、彼は離してくれない。

『ちょ、ちょ！？』

パニくる私を他所に、ウルド様は丹念に流れた血を舐めとる。
そのざらざらとした舌の感触が、身体能力が向上してしまっている私には強い刺激となってしまって。

『っん、ぅ…！』

背中がぞわぞわする。

『っゃ…！』

「…、」

ぴくり、とウルド様は反応して私を見上げる。何か言おうとして、彼は息を吐くとやめて唇を離す。

「…おまえ、その顔はやめておけ」

『、は？』

ぐ、と顔を寄せてきて。

「誘っているのか？」

そう、意地悪で色のある低い声で耳元で囁かれて。

「俺は構わないが？」

『っな！？』

私はただ、顔を真っ赤にして狼狽えることしか出来なかった。