終天に巡り逢うⅣ (ページ32)

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ー驚いたわね。あの子が吸血鬼に…しかも、男をゲットしていたなんて。

沈黙を貫いていた真昼がぽつりと呟く。

ーしかも中々のイケメン。それにあの強さはかなり高位の貴族よね。どう？妹を取られた気持ちは。

「うるせぇ」

ーもうあーんなことやこーんなこともしたのかしら？あの頃の私たちみたいに。きゃー！いやーん！

「うるせえって言ってんだろ」

誰が好き好んで妹のそういうことを勘繰らないといけないのか。

ーグレンったら強がらなくていいのよ？私が慰めてあげるから。

「黙ってろよ真昼」

ーあはは。

楽しそうな声を聞きながら首に触れれば、ぬるりとした血の跡が掌を汚す。

「はぁ…いってーなぁ…」

赤い、アカイ、血。
この血でAは完全なる吸血鬼になったのだ。人間の血を飲むことで、彼らは成長を止める。時間を永遠に止める。
人として繋ぎ止められてた最後の鎖を、俺の血を飲むことで彼女は断ち切ったのだ。

もう、アイツは_________

ーあら？グレンったら泣いちゃう？

「なかねーよ」

ーあはは。うそつきー。

Aに噛まれた所は、既に跡形もなく治っている。
だが、確かにアイツはここに居た。確かに生きていた。
たとえ吸血鬼だったとしても、それでも。
俺が見捨てたたった一人の妹は、生きてた。
誰かに求められて生きていた。

愛されていた。

ーウルド様。

見たこともない、あんなにも温もりを宿した瞳で、優しい表情をして、誰かを一途に愛していて。

「…」

太陽の光が瞳を強く刺激し、逃れるように手の甲で視界を覆う。
俺は彼女にそれを与えてやれなかったけれど。
それを放棄したけれど。
彼女を遠ざけたけど。

「…ああ…」

身勝手だとは分かっている。自分のエゴだと分かっている。後悔から逃げてるだけだと分かっている。
それでも、彼女が生きていたことがただただ嬉しい。

「はぁー…いってぇーなぁ」

ああ…くそ。…久しぶりに、泣きそうだ。
でも、この涙はきっと。

「生きててくれて、良かったよ。…A」

たとえもう、おまえに俺が必要なものでなくても。
おまえが生きていてくれただけでいい。

だが、

「…次に会う時は、」

俺の願いのために、俺はもう一度おまえを突き放す。
もう一度、俺はおまえを殺す。

「…」

ーグレン。私がいるわ。

でももう俺は、立ち止まれないから。

おまえじゃない《家族》を救うために俺はまた、あの日のように

_______禁忌を犯す。