終天に巡り逢うⅣ (ページ30)

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「ちょっとグレン！どういうことだよ！？」

「俺が知りてぇよ。ただ分かってることは…アイツが、吸血鬼だってことだ」

「な！？」

「う、嘘ですよね！？グレン様！？」

嘘ならどれだけ良かったか。死んでいると思っていた妹が、吸血鬼だなんて。
だがそれでも、生きていたことを喜ぶべきか。
ウルドと呼んだ男と話しているAはこちらのことなど興味がなさそうにしている。警戒心のカケラもない。

『…んー？違う足音が近付いてますね』

「ああ。だから早くしろ」

『分かりました』

と、Aは俺を見据える。

『兄さん』

「…なん、」

『______血を、ちょうだい？』

そう、耳元で声がしたと思ったらいつの間にか目の前にいたAに強い力で後方の瓦礫へと押さえ付けられた。

「グレン！！」

「グレン様！！」

くそっ。振り切れない。凄まじい力だ。

寛げられた襟から覗く俺の首筋に迫るAの形の良い唇と、そこから見えた鋭く尖った牙。こちらを見上げた一瞬視線が合い、まるで安心させるかのように彼女は微笑む。
生温かい息が首にかかり、牙が肌に触れて、そして、それが突き刺さった。

「ぁ！？」

「グレン！！」

「グレン様！！いま…」

一陣の風が吹き抜けると、仲間たちの声が途絶えた。
迫り来る快楽に対抗しながら横目に彼らを探すと、横たわり気絶していて。

「っ…！」

引き離そうとするが、Aの力に抑え込まれて意味を為さない。こんな小さな身体なのに。
脳髄を狂わす甘い快楽と、命を奪われる屈辱感がせめぎ合う。
ギュルルッ、と勢い良く血を吸われる音がよく響く。だがそこに害意は感じられなかった。
朧げな意識の中ゆっくりと腕を動かし、

『、』

Aの背中に腕を回して抱き締めて、同時に思う。

＿＿＿＿嗚呼。彼女の体は…こんなにも小さかったのか。

一瞬Aは反応したが、俺がそれ以上何もするつもりがないと判断したのか血を飲むことをやめなかった。
…ウルドからは射殺さんばかりに睨み付けられているが。

「…ごめんな、A」

口から溢れた言葉は、そんな陳腐な謝罪だった。

「助けてやれなくて。おまえの苦しみを理解してやれなくて。寂しさを分かってやれなくて。…おまえを、独りにしてしまって」

僅かにAの力が強くなる。

「俺は…強いおまえのことが羨ましくて、何も出来ない惨めな俺を見たくなくて…だから、おまえのことを遠ざけた。俺のくだらない自尊心が…おまえのことを殺した」