終天に巡り逢うⅣ (ページ27)

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『けど、私は見つけたから』

自分と同じ紫暗の瞳が美しく輝く。

『私の唯一を。私が、私であれる人の側を。私の心をあげられる人を。私の力を捧げたいと思う人を』

「…それが、吸血鬼だと？」

『うん』

「…正気か？」

『うん』

「騙されてるだけだろ」

『うん。それでもいいよ、別に』

あっけからんと言ったそれに、瞳を見開く。

『別に騙されていてもいい。それでも私には、彼が必要だから。もう、この想いを無かったことには出来ないから。もう、この心を殺したくないから…もう、私自身を偽りたくないから』

真っ直ぐで、ひたむきな言葉と眼差し。
俺は、そんなAを知らなかった。こんな表情をする奴だと。俺は…アイツの兄貴なのに。

『あの人は、私のことが欲しいって言ってくれた。私のことを手放したくないって、側に居て欲しいって…愛してるって言ってくれたから。だから、私はそれを信じる。あの人と一緒に居る。それが私の１番の望みなんだ』

彼女をここまで変えたその吸血鬼が憎い。…いや、もしかしたらこれが本当のAだったのかもしれない。俺が知らないだけで。
ぐ、と拳を握り締める。

「…じゃあ、なんで今更俺の前に来た」

『ちゃんと、《サヨナラ》したくて。あの人に連れて来て欲しいってお願いしたんだ』

「…」

サヨナラ、か。
俺とはもう、会うつもりもないってことか。Aには俺の存在が要らないと。
彼女はいま、全てを捨て去ろうとしている。

『…知らないだろうけど、あの頃の私にとって…兄さんは私の生きる意味だったんだよ』

「！」

唐突に告げられたその言葉に瞳を見開く。

『兄さんがずっと頑張ってたのは知ってる。凄いって思ってた。私には、兄さんみたいに誰かの為に頑張れなかったから。私は、逃げるために力を付けたから。自分を守るために力を付けたから』

「だがおまえは、俺たちの為に汚れ仕事をしていた」

俺はそれを知らなかった。彼女が幼い頃から汚れ役を担わされていたなんて。それを知ったのは、もう彼女がいなくなった後だった。
それに、困ったようにAは笑う。

『…ねぇ、兄さん。私はさ、兄さんの側に居るのが怖かったんだ』

「は、？」

意味が分からない。何故、俺の側に居ることが怖いんだ？何かしたか？

『兄さんが何かしたわけじゃないよ。ただ…私が臆病だっただけだから』

「どういう、」

『兄さんは、《主人公》だから』

「、主人公？」

更に意味が分からず眉根を寄せる。