終天に巡り逢うⅣ (ページ3)

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少し眉根を下げて、困ったような微笑みを浮かべて続ける。

「忘れ去られるということが、どれだけの絶望か。虚しさか。…そなたは分かるだろう？俺は何千、何万年と生きてきた。かつては俺を信仰する者もいた。しかし時の流れと共にそれは薄れてゆき、やがて忘れ去られた。その結果、俺という存在は消えかけた」

『…信仰心が、糧だったの？』

「認知されねば、いないものと同義なのだ」

瑚月は言う。

「認められなければ、俺の存在は意味を成さないからな」

『…』

「俺は鬼神だ。求められなければ、力は弱まっていく。…それはお上にとっては良いことだろうがな。…だから、人々から俺のことを忘れさせていった」

『！な、』

それはつまり、

「…別に何かを思うわけではない。どうでもよいことなのだ」

『…』

「世界でただ一人、そなたが俺を見てくれたからな」

そう言って近付いてくると、私の前で立ち止まる。

「俺のたった一人の愛しい人の子よ。そなたの生に幸あらんことをずっと願ってきた。しかしこの世界は…そなたにとっては逃れぬことの出来ぬ檻だった」

『…』

「そなたの記憶を…名を奪い去り、閉じ込めた」

『…』

「そなたの中に居たからこそ、その絶望の深さを知っている。周りを拒絶する心を理解出来る。同時に、誰かに愛されたいと願っていた心があったことも」

ふ…と瑚月は小さく笑みを浮かべてから、ウルド様やルクさんに視線を投げる。

「よもや、それを彼らのような者たちから与えられるとは思わなんだがな。…まぁ逆に、何千年と生きてきたからこそなのかもしれぬが」

「…」

腰に回るウルド様の指先に力が篭ったのを感じて彼を見上げると視線が合う。

「それでも、そういう者たちに巡り会えたのは良いことだ。…そなたが俺にしたくれたように、彼らはAの孤独を埋めてくれるだろう」

嫋やかな指先が私の頬に触れて、撫でる。

「…」

『瑚月？』

「…弱く脆かったおまえが、よくもここまで強く逞しくなったものだ」

『…、？』

違和感を感じる。胸が騒つく。なんだ？

「…漸く、俺も逝ける」

『は？』

零されたその言葉に、思わずバカみたいな声を出す。

『なに、言って…！瑚月は、っ！？』

はらはらと光の粒子が瑚月の身体がら現れる。

『な、なに。これ』

「消えゆく刻が、来たのだよ」

ゆったりとした口調で、穏やかに彼は残酷な言葉を言う。

『消えるって…なんだよそれ！？なんで瑚月が消えるの？！』