Bad Day Orange 《Ⅰ》 (ページ17)

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記憶ページ17

*若年性アルツハイマー

Purple side

どうして早くきづいてやれなかったんだろう。

少しおかしいところがあったのに、その時なんで声をかけなかったんだろう。

今になって後悔しても全て遅いのは分かっている。

それでも、そう思わなければやっていけないほどに今の俺たちは現実を受け入れきれていない。

今日康二が仕事に来なかった。

前に違う仕事が入っていたわけじゃない。

連絡もなく、1時間がすぎてようやく俺に電話がかかってきた時には康二は一人で頑張った後だった。

｢おい、康二！もう1時間も遅れてんだぞ！｣

かかってきた途端に康二の声も聞かずに声を荒らげる。
康二の声が聞こえなくて、｢おい！｣ともう一度叫ぶと小さな康二の声が聞こえてきた。

｢、ふか、さん…｣

｢康二？｣

康二らしからぬ震えた弱々しい声に怒りも冷めて不安になる。

｢、おれ、おれ、｣

｢ゆっくりでいいから、どうした？｣

｢ｯ、ここが、どこか分からんねん…ｯ｣

涙ながらに周りに見えるものを教えてくれて、場所が康二の家から離れていないことがわかった。

みんなに断りを入れてそんなに遠くない康二のところに迎えば、道の端に座り込む康二の姿。

｢康二！｣

｢ｯふかさ…ｯ｣

涙でぐちゃぐちゃの康二の顔を出る前にあべちゃんに持たされたタオルで吹いてやる。

康二はしきりにごめんなさいというもんだからもう大丈夫だと伝えてゆっくりと歩き出した。