敵の敵13 ページ47
「おねーさん、ものすごく変装上手いけど、多分、こーゆーの向いてない。あんまり頻繁にさせないであげた方がいいと思う」
キッド君は、私にではなく沖矢さんに向かってそう言った。
私はあの瞬間、本当に有希子さんだった。真似ている、とか、演じている、という気持ちは全然なくて。
蘇芳Aであったことなど全て忘れてしまっていた。
だから、零に『Aの変装だろう?』と問い詰められても、心底驚くことしかできなかったと思う。
「それは同感。戻ってこれなくなりそうで心配だ」
沖矢さんはそう言うと、少し早いけど夕食にする? それとも、仕事を片付けてくる? と私に問う。
そういえば、仕事が途中だった。
実は工藤邸のとある一室に、今、PCやモニターをたくさん持ち運んでいる。
私の仕事がここでもできるように、一室貸して欲しいと有希子さんに申し出たら「ついでにモニタールームにしておいてもらえる? カメラもいっぱい仕掛けたいからモニターもたくさん入れて欲しいって、新ちゃんが」っと返事が来たのでそんな感じになった。
費用は持つというので、結構本格的なモニタールームを設置したついでに、私の仕事道具も置かせてもらっている。
監視カメラはもちろん、普段は切っているんだけど――。コナン(新一)君、自宅にそんなに盗撮用モニターを仕掛けるなんて、何が目的なんだろう――。
なお、私の仕事についてはPCを使う事務仕事、としか伝えていない。
私はもちろん、会社に出勤している。そして、役員室となる一室に居るふりで――たまにここに戻ってきて作業をしているのだ。
会社の内線から、私の仕事用スマホ宛にダイレクトにつながる仕組みだ。
――これは別に、工藤邸(またはホテル、あるいは新居)で仕事をしたいからと私が持ちかけたわけじゃない。
社長から「秘密裏に作業をして欲しいので、ここではないところで仕事をして欲しい」と言われたからそうしているまでだ。
そんなわけで、会社は会社で気が重い。
うちの会社は実は今のところ、非上場企業なので(でも、実は近々上場の予定があるみたいで総務のユカちゃんは仕事が大変と嘆いていた)株主総会などはないが、来週には取締役会でいよいよ平社員ではいられなくなるのも、なんだかな――という感じではある。
今のところそんな風には見えないけれど、万が一、社内の人からやっかまれたら「社長の親戚ってことにしておいてくださいねー!」とは伝えているけれども。
121人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時