敵の敵7 ページ41
もちろん、本当にここに安室透がやってきてもそれはそれで大問題なんだけどさ。
夕食が終わった私たちは、ソファに移って話を続ける。
「言っておきますが、別段ミステリートレインの一件があったから、キッドをこちらに巻き込んだ――わけじゃないですよ?」バーボンを口にした沖矢さんが口を開いた。
――っていうか、なんでバーボン飲んでいるんだろう――。
味? ただの味の問題なんだよね?
「そうなの?」――そんなこと言われて、簡単に信じられるわけもなく私は首を傾げる。
「もちろんじゃないですか、子供じゃあるまいし」と、無邪気に笑う沖矢さんの言葉を真に受けていい物かどうか逡巡する。
「とはいえ、まだキッドにも話してなかったので、ここで明かしましょう。
――怪盗キッド、君は――江戸川コナン(ボウヤ)の言うところの【黒ずくめの組織】から命を狙われているの、知っていますか?」
「――は?」
近江谷君の姿のままのキッド君が目を丸くする。
「以前、銃で撃たれたのは新人警官と報道されました。でも、実際は違う――。警察に紛れ込んでいた組織の人物の仕業だった可能性が濃厚です。
警察もさすがに潜入されていたことを表沙汰にはできないから、苦し紛れの嘘を発表したんでしょうね」
「それって――」キッド君は事態が呑み込めないようだ。もちろん私も。
「実際、七夕の美術館では組織の人に銃を向けられていました。
ボウヤに阻止してもらったので、確認してもいいですよ。まあ、恩を売られるだけでしょうけど」
「――え?」私、そんなの知らなかった。聞いてないよ?
「あなたには車で待っていてもらいましたし、そこまでお伝えしても怖がらせるだけですから」――沖矢さんは私の頬にキスをする。
向かいの席に座るキッド君は、その話に怯えるどころか、むしろその瞳に闘志を燃やしているようにも見えた。
「なるほど。敵の敵は味方ってヤツか」なんて呟いている。
昨日ジョディもそんなこと言ってたなぁ……。
「ま、名探偵と組む気にはなれねーけどな」と付け加えるあたり、さすが大怪盗だ。――いやその姿は、私の元彼だけどね。ややこしいからやめてほしい――。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時