元彼と再会2 ページ5
夜、零から電話が入ってきた。
「A、ご飯食べた？」
数日ぶりの電話だというのに、どうしてもそれが一番に気になるらしい。
「うん、きちんと食べてる。零は仕事忙しい？」
「ちょっと色々あって……。また一週間くらい、逢えないかも」
「わかった。平気だから仕事頑張って」
「そう？ 僕はAに嫌だ淋しいって泣いて欲しいけど」
本当にそうしたら、すごく困った顔をするくせに。変わった趣味だ。
「わかった。じゃあ、零が代わりに泣いてくれてもいいよ？ 私が大丈夫、淋しくないよって慰めてあげる」
私が言うと、電話の向こうで零がくすりと笑った。
「元気になった、ありがとう」
「こちらこそ」と私も笑う。
.
翌日、月曜日の朝、人の少ない大学の学食で軽食を食べながらコーヒーを飲んでいたら、沖矢さんがやってきて目を丸くする。
少ない人たちの視線を一身に浴びるくらいには注目浴びてますよ？ ルックス良すぎなんじゃないですかね、やっぱり。
「沖矢さん、おはようございます。早いですね」
「ええ、なんとなく今朝はここであなたに会える気がして」
相変わらずそこの読めない笑顔だ。
――でもそれって、今、家に零が居ないことを把握しているという意味なんじゃないの？
「そんなことまでわかるんですね。驚きです」
「実のところ、あなたから電話がもらえるかと期待していたんです」
「それは全く気が付きませんでした。私も色々と忙しいですし、沖矢さんも多忙でしょう？ この学食、美味しいですね」
「よければいつでも、食べに来てください。ご一緒します」
――あれ？ 別にそう言う意味で言ったわけじゃないんだけどな。
「ふふ、職場から遠いので難しそうですね。
何か、お話したいことでもあったんですか？」私は話を流す。
「ないですよ。――何もなくても電話ができるのが恋人の特権だとばかり」
急に何を言い出すのかと思ってぎょっとするが、沖矢さんの方は至って穏やかな眼差しで私を見つめていた。
赤井秀一の恋人ではあるけれど、沖矢さんと恋人関係ではない――と私は思っているんだけど、もしかしてそのあたりから認識が違うんだろうか。
話を変えよう。
「沖矢さんは何も食べないんですか？」
「ええ。私が食べている間にあなたは去っていくでしょう？」
「そんな風に言われたら立ち去れませんね、時間はまだありますから、ここで一緒にお話ししますのでよければどうぞ」
――相変わらず、沖矢さんは底が知れない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月25日 12時
