敵の敵3 ページ37
「でもほら、だから良かったんじゃない? 追いかけられるのに慣れて過ぎてたから、振り向かないAに興味を持ったのかも」
私も追いかけすぎてた方だし、と、ジョディは若干自嘲気味な笑みを浮かべて、グラスの中のワインを煽った。
「シュウって……潜入捜査、してたんだよね」――バーボンと似たようなことをしていたんだろうか。
「ええ、そうよ」
「よくあんな組織にもぐりこめたよね。さすがって感じ」
「しかも、ハニートラップでね」
ついジョディが口を滑らせたのはお酒の影響なんだろうか。
あ、つまんない話になりそうだから話題変えなきゃ、と、ジョディが言ってその話はうちきりになった。私は掘り下げることもなく、別の話を楽しむことにする。
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私たちは翌日に響かないように、日付が変わる前に布団に入る。
ジョディがわざわざ来客用にと、布団を準備してくれていたので、それを借りた。
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――ハニートラップ。
『お姉ちゃんの恋人。バーボンとはライバル関係』
ミステリートレインで聞いてしまった哀ちゃんの言葉を思い出す。
そういえば、シュウの元カノって銃殺されたって聞いた。
てっきり、「アメリカって銃社会だし、そんなこともあるのか――」くらいに思って聞き流していたけれど。
あれ? 哀ちゃんの家族は皆殺されたって言ってたよね?
つまり、『殺された哀ちゃんのお姉ちゃん』と、『銃殺されたシュウの元カノ』は同一人物ってことなんだろうか。
だから、妹である哀ちゃんのことを過剰に気にかけているの?
だとしたらシュウが――群馬のキャンプでの一連のことは私に対して怒るのも無理ないか――。守ってあげられなくてごめん、やっぱり子供たちの傍を離れるべきじゃなかった、そもそもキャンプの付き添いに阿笠博士が来られなくなった時点でシュウを頼るべきだった、と、心の中で詫びる。
いや、こんな推理、『悪くはないが根拠が不十分。妄想の域を出ない』とシュウに笑い飛ばされるかもしれないけれど――ね。
私は探偵じゃないし、推理は苦手だ。
そういえば、キッド君は突然私の彼氏、しかもカフェのアルバイトだと思っていた男(零)に銃なんて突きつけられてどう思っているんだろう。
気になっているけれど、私がキッドに連絡をする隙をシュウが作ってくれるはずもなくて今日にいたっていた。
意外とあちこちに問題山積みだよね――。
そんなことを思いながら私は、襲い来る睡魔に負けて瞳を閉じた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時