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トラップ5 ページ31

ベッドルームを出て、シャワーを浴びればシュウは沖矢昴になっていた。

彼曰く、ここで変装しておかないと、あとで面倒になってつい変装を忘れるから、らしい。

コーヒーメーカーでコーヒーを淹れると、良い香りがダイニング中に広がる。

パンをトーストして、スープを作り、目玉焼きが焼きあがった頃、沖矢さんがキッチンに来た。

「Aも、料理をするんですね」

背後から足音も立てずにやってきて、ぎゅうと腕の中に抱き寄せるから皿ごとトーストを落とすところだった。

本当に心臓に悪い。

もちろん、彼はそんなこととっくにわかっていて、落としそうな皿をその手で受け止め、私の頭にキスを落とす。

無意識に、身体がビクンと震えた。この人、怖い。

「そんなに怯えないで――。あなたのご期待に添いたくなるから」

とか、機械で作られたテノールのとびきり良い声で朝からなんてこというの。こんな同居生活、絶対に身が持たないから今すぐ我が家に帰りたい。

「お腹が空いたら料理くらいします」

誰のせいで、朝からお腹が空いていると思ってるんだか――。全く。

「おはよう、昴。今日は意地悪しないで」

昨夜の徹底的な意地悪に懲りた私は、彼が望むように下の名前で呼ぶ。

腕の中で身をよじって、彼に向きなおし、手を伸ばして抱き着いて触れるだけのキスをした。

「人聞きが悪いことを言わないでください。あれは意地悪じゃなくて愛情表現です。私たちの間には、必要でしょう?でないとAはすぐに……」

しまった。説教が始まる。

「あのね、シュウ。スープもコーヒーも冷めないうちが美味しいの。もちろん、トーストもね。だから早く食べよう?」

私は彼の言葉を遮ると、腕の中から抜け出した。

簡単に抜け出させてくれるうちは、上機嫌なのだ、多分。

食事の時間は平和だった。もうずっと、食事の時間を過ごしたい。そんな風に思って、私が必要以上に時間をかけてのんびりコーヒーを飲んでいる間に、沖矢さんは食器を洗ってくれた。

「おうちに居る時は、シュウって呼んでもいいよね?」

「ええ、もちろん」

気だるさのあまり動く気の起きない私を、ソファの上、自分の膝枕で寝かせたまま、本を読んでいた沖矢さんはくすりと笑う。

「あなたがそんなことまで細かく確認を取るなんて。今日はとても素直でいい子ですね。Spare the rod and spoil the child.とは、本当らしい」


――はぁ、有希子さん。ほんっと、余計なこと言わないでほしかった。

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時

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