ミステリートレイン6 ページ13
そんな風にとても心配そうに見つめられると、どんな表情をしてよいかわからなくなって私は目を伏せる。
「彼がそこに所属していることは聞いてたし――」
零が組織に潜入していることは本人から聞いていた。もしかしたらバーボンなんじゃないかって、予想もしていた。でも実際に目の当たりにすると、やっぱりひどくショックで頭の中がぐらぐらする。
そうだよね。黙っていたのはシュウだけじゃない。零本人が私に秘密にしていることを、シュウが暴露するわけにはいかない。
そんなの少し考えればわかることだ。私だって、どちらかの秘密を相手には伝えない。シュウだって多分、同じことだ。コナン君に対して黙っていた理由は全く予測できないけど。それも私への情報流出を避けるためだった可能性もゼロではない。
大きな掌が、私の頭を撫でる。私はこのままシュウに抱き着きたかったけれど、個室の扉がいつ気まぐれに開くかわからない以上、ちょっと躊躇う。
「急すぎてまだ理解が追い付いてないだけ。平気。
今は時間がないんだよね。沖矢さんは、有希子さんについていった方がいいんじゃない?
で、私にして欲しいことって結局何だったんだろう……」
「おそらく、灰原哀の説得、だと思う。彼女は俺のことを警戒しているから、話を聞いてくれるとは思えない――というのが、有希子さんの考えだろう。
まあ、どちらにせよ名古屋に着くまでにはまだずいぶん時間がある」
「へぇ……。この列車、名古屋行きなんだ? 西に向かって走っているとは思ったけど」
私が呟くと、沖矢さんは目を丸くした。あまりにも何も知らないことに衝撃を受けているのかもしれない。でも、ミステリートレインなんだから、それで良くない? ダメ?
駄目な場合、こっちは探偵でもエスパーでもないので、できれば毎回事前に丁寧な説明と解説がもらえると嬉しいです。
「これ、持っておく?」と、ものすごく簡単に拳銃を取り出してくる。
「ううん。咄嗟に使えるとは思えないし……」
そこで私は言葉を止めた。
零のことを撃ちたくない、と、言葉にすることもできなかった。
「そもそもどうやって持っておけば――って、きゃ……」悲鳴をあげようとした私の口を、当たり前みたいに沖矢さんの唇でふさがれる。
だって、突然何の前触れもなく、スカートめくるのよくないよ? ちょっと……っ!
――突然のことに、私は理解が追い付かない。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時