ミステリートレイン5 ページ12
――なるほど、そういうことか。
「もしかして、コナン君のピンチなんですか？ 私でお役に立てるなら、なんでもおっしゃってくださいね。
でも、私は推理力もなければ体力もない、いたって普通のOLです。特殊な能力に秀でた公務員ではありませんよ？」
有希子さんの中のシュウの評価は、私の想像が及ばないほど高い。
赤井秀一の恋人だったら何でもできるはず、くらいに思われていたら困る。
残念ながら、プログラミング以外はほぼ何もできません。
そして、ここにはパソコンもないから、得意のプログラミングを披露する機会もなさそうだ。まさか、スーツケースの中にパソコンがぎっしり入っていたりする？
ちょっと考えづらいけど。
「あら、話が分かるじゃない」
「有希子さん、ちょっと待ってください。まだ、彼女には何も伝えていないんですから。話は順を追った方が良いのでは？
Aも、何もわからないのに安請け合いするのはやめた方がいい」
ものすごく真剣に沖矢さんからたしなめられた。
そうはいっても、どうせ私に断る権利何てないと思うんだけど。
「順を追うって言ってもねえ。どの程度の知識があるのかよくわからないし、時間的な余裕もないでしょう？ ベルモットがどこの車両に居るのか探っておきたいし」と有希子さんが言う。
確か金髪の女性はベルモットだと、哀ちゃんが言っていた。
「ベルモットってもしかして、【バーボン】と一緒に居たりします？そうだとしたら、私はさっき会話しているのを聞いたかも。その辺を歩いていましたよ」
「あら、ちょっと探してみようかしら」
有希子さんは立ち上がって部屋から出て行った。
.
一方、沖矢さんの表情は露骨に曇る。
「君はバーボンを知っているのか」
彼の穏やかな声とその眼差しが、確実に一瞬引きつった。
むしろあれですよね？ シュウは長い間『バーボンが零であること』を知っていたけれど、私にもコナン君にも秘密にしていたってことだよね？
そのせいで私はコナン君にまで『バーボンじゃないか？』って疑惑をかけられたんですけど。
――さすが元組織に潜入していただけあって、シュウが誰の味方なのか、よくわからなくなってきた。
「ついさっきまで全く知らなかったわよ。
ただ、ついさっき、【バーボン】って呼ばれた人が返事をしていたから、多分間違いないと思う。あ、私は声を聴いただけで姿は見ていないわ。二人とも。だから、向こうにも私の姿は見られていないと思う」
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月25日 12時
