溺愛禁止！1【赤井秀一】【安室透】

ヘッドハンティング12 ページ40

「A」

前を歩いて案内していると、不意に赤井さんが私を呼んだ。

「はい？」

驚いて立ち止まると、赤井さんは私を手を掴む。

風見さんがぎょっとしているの、わかる？

「こんなに冷たくなってるじゃないか。そんなに緊張しなくていい。君を困らせるような事態にはさせない」

――赤井さん、今自分がどんな姿しているかわかってる？ どこのパーティー会場でも見劣りしないレベルのブラックスーツを華麗に着こなしてるんですけど！


通りすがりの人たち(もれなく私の会社の勤務先の人だよ？)がとてつもなくぎょっとしてこっちを見ているし、さすがの私も恥ずかしい。

「……あ、ありがとうございます」

毎回私の手を掴んで体温確認するのやめてくれるかな……。おかげさまで、熱が上がって無駄に暖かくなりました。

ありがとうございます。もういいから放してくれると嬉しいかな？



「Aさん、遅くなってごめんね」


手を握られたまま向かい合う形で止まっていた私たちに声をかけてくれたのは、安室さんだった。

――え？ 人前に出ないって話では？

っていうか、安室さんもまたこの前のビジネススーツより、さらにワンランク上の上質そうなスーツを身につけていて、周りの人の視線を集めている。

なんなの。安室さんも本当にかっこよくて、明日あたりスーツのCM依頼が殺到してもおかしくない感じ。


ここは、ファッションショー会場なの？ 私、今日、有名ファストファッションブランドのシャツとスカートなんですけど……。なんなら、メイクを直す暇もなかったし、逆に一人だけ浮いているんじゃないかって、申し訳なくなってくる。

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