溺愛禁止！1【赤井秀一】【安室透】

ヘッドハンティング1 ページ29

火曜日は、ごく普通に平和に過ごせる一日だった。
あれから仕事に戻ったはずなのに、朝起きたら玄関に安室さんお手製のお弁当が置いてあったし、コーヒーショップに赤井さんの姿はなかった。

帰国したのかもしれない。

ビバ、平和な生活！

私の作業効率も爆上がりです。


受付嬢の田中さんが夕方、自分の帰社時間に

「蘇芳主任、もうあのニット帽のお兄さん来ないんですか？

　めっちゃタイプだったんですけど！！ 眺めるだけで幸せなんですが、写真持ってないんですか？

　っていうか、彼氏じゃないなら私に譲ってくれるべきでは？ 無理なら金髪のお兄さんをください！！

　そもそも、いったいどんなところで知り合ってるんですか？ え、秘密なんてずるいです。蘇芳主任、イケメン独り占め罪で捕まりますよ？」と、結構な形相で詰め寄ってきたのが唯一の騒ぎだったくらいだ。





問題が起きたのは、水曜日。

朝、私は駅を出たところで上質なスーツを身に纏ったロマンスグレーの素敵な外国人のおじさまに英語で声をかけられた。

「●●という会社はどちらですか？」と。

それは、まさに私の勤める会社だったので、「私の勤める会社です。よろしければご案内しますが、まだ会社のオープン前です。お約束ではないのでしょうか。では、失礼でなければ、ご一緒にコーヒーでもいかがですか」と、一緒にコーヒーを飲んだ。

ついでに、失礼を詫びて朝食も取った。

赤井さんの姿がなくて本当に良かった、と思いながら。

質問されたので、わが社がWeb系の会社であることを差しさわりないレベルで話した。もちろん、国家機密に関連するセキュリティをあれこれ請け負っていることなど、おくびにも出さない。

イギリス留学のおかげで、それなりに外国人と会話できる英語力があることに安堵しながら、紳士を社長室まで案内し、自分の仕事をはじめた。





それで、今日も私は平和な一日を過ごせる――って思ってたんだけど。

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