jealousy16―安室side― ページ7
そんな折、とても楽しそうに街中を歩いているAさんを見かけて、息が止まるかと思った。白を基調にしたワンピースに、ウェッジソールのサンダル。長い黒髪は丁寧に編み込みハーフアップでまとめられていた。
彼女がショーウィンドウにわずかに興味を示すたびに隣の男は店に入ろうとする。その都度彼女は楽しそうに笑いながらも首を振り、別の店へと誘導するのだ。
「ちょっと見ていただけだって。別にこれが欲しいわけじゃないよ?」彼女の唇がそう動くのが見て取れた。
考えてみれば、彼女がいつだって米花町内にいるとは限らず――。夏休みに都内在住の大学生が、都心に遊びに来ているからと文句を言われる筋合いもないわけだ。
半年前のクリスマスには、「絶対に恋なんてしない」と嘆いていた彼女が今はすっかりそんなことを忘れたかのように笑顔でいる様子は微笑ましくもあり、一方でその隣にいる男が自分ではないことがひどく腹立たしかった。
もっとも、いまだに本名さえ伝えられない自分が傍に居たところで、Aさんがあれほど無邪気な笑顔を見せてくれたかどうか疑わしい。
だからせめて、彼女が安心して楽しめるようこの日本の治安を守らなければと強く思い、容赦なく日差しの降り注ぐ街中に繰り出した。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時