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今日のメロンは「メロンバスケット」に姿を変えた。
「本当に器用だよね」
「ナイフがあれば誰にでもできる」
私は丸くくりぬかれたメロンを1つ、フォークにさしてどうぞと秀一さんの口元に運ぶ。
ぱくりとメロンを食べた後私を見つめてくすりと笑う秀一さんが、あの写真でとりつくしまもないほど冷たいオーラを振りまいていた人と同一人物だなんて、本当に不思議な気持ち。
「本当は甘いもの好きだよね?」
「好き嫌いは特にないといったはずだが」
秀一さんはそう言うと、指でつまんだメロンを私の目の前に差し出した。私が食べさせた手前、同じように食べる以外に選択肢がなくて、ぱくりとかじりつけばそのまま指先で唇を撫でられる。
官能的な動きに心拍数があがり、顔が朱に染まる。
「……っもう!」
「悪戯好きなAに、お礼」
メロンよりは君の方が好きだと、手を洗って私の顎を持ち上げ唇を重ねてきた。私の腰が抜けるほど深く甘いキスを長々と与えた秀一さんは満足したのか力の抜けた私を抱き上げて、椅子に座らせる。
悪戯を仕掛けたつもりなんてないのに。
「秀一さん、意地悪」
「そんなことはない。ほら、君の好きなカクテルを作っているじゃないか」
――そうだけど。シェイカーを振る様子は本当にかっこいい。
「どうぞ」と差し出されたのはメロン・ボール。オレンジジュースも入っているからか、生メロンとオレンジが飾ってある。
「ありがとう。美味しい」
一口飲んで感想を伝えれば、「その笑顔が見たかった」と秀一さんも微笑み返してくれた。
楽しく飲んでいると、そのうちJが帰ってきた。
「今日は本当にありがとう。予想以上にスムーズに進めて良かった」
「役に立てたのなら良かったわ。Jも一緒に飲もう? シュウの話が聞きたい」
「おや、珍しい。彼女、酔ってる?」Jの言葉に
「ちょっと調子に乗って作りすぎたみたいだな」と、秀一さんが返している。
「そんなことないよ?」
「はいはい」
秀一さんはくすりと笑う。そういえば、今夜は私に飲ませるばかりで彼は飲んでいないような気もするが、定かではない。
「いいよ、Lady。きっとまだ君が知らない、面白い話をたくさん聞かせてあげよう」
いつもの姿に戻ったJは、にっこり笑うと向かいに座り口火を切った。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時