jealousy14 ページ5
突然銃声が聞こえた。
私は気づけば立ち上がり右腕を庇っていた。
大きい音には慣れたし、射撃部内での銃声が響き渡るのだって平気だ。とはいえ、さすがに平和なはずの街中で鳴り響くリアルな銃声は怖い。
ただ、以前のように撃たれた当時の衝撃や痛みを繰り返し感じることはなくなっていた。
病院からも良い傾向だといわれている。
店内にいる人たちの様子が全く変わらないのは、誰もこの音を銃声だとは思わないせいだ。
「あの音だとそんなに近くはない。安全のためには、ここにいた方がいい――」
昴さんは、抱き締めようか? それとも手をつなぐ? と椅子に座ったまま穏やかな視線を私に向ける。私は呼吸を整えると伸ばされた手を右手でつかみ、向かいの席に座りなおした。
「いつでも、なんでもできるってわけじゃないもんね……」
――安室さんが巻き込まれてないといいけれど。心配だからと見に行ったところで何ができるわけでもない。
いくらその正体が凄腕のスナイパーだからって、今、街中での銃撃戦に加勢することなんてできるはずがない。
「すみません」
「どうして? 昴さんが私に謝ることないよ」
私は昴さんの手の甲にキスする。
だって、彼が一番優先すべきことは正体の隠匿だ。
それ以外は全部、些末なこと。
私は時間をかけてアールグレイを飲み干した。
「そろそろ時間だよね。レストランに食べに行こう?」
昴さんの手を引っ張る。
何もかも全部守ることはできない。
私はあんなに安室さんに守ってもらったけれど。
――今回も、何一つ役に立てそうにないから。
せめて、今回は人質になって足を引っ張ることがないようにしたい。
そう思ってぎゅっと昴さんの手を握る。
「心配ありません。私の考えうる一番安全なルートでお連れしますよ? Aさんを守るのが私の最優先事項ですから」
――そんなこと言ったら、あなたの『偽装死』にかかわる全ての人が危険な目にあいかねないのに。
まあ、でも、昴さんがそうだというのならそれでもいい。
私は守ってもらった命の全てを、の正体を隠し通すことに使うことに決め、足を運んだレストランでめいっぱい美味しい料理を堪能した。
jealousy15―安室side―→←jealousy13—沖矢side―
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時