information9 ページ39
待ち合わせのカフェに着いた時、昴さんの姿が見えなくて不安になった。
周りを見渡せば、喫煙エリアでひどく難しい顔をして煙草を吸っていてどきりとした。
たしかに今、仮面の下の赤井秀一はあの写真に近い、近づき難い顔をしているのだろうと、容易に想像がついてしまったからだ。
昴さんって、普段はこんな感じなんだーー。
近づき難いカッコ良さっていうのがあるんだなとしみじみ思う。でも、それもほんの一瞬だった。私の視線に気づいた昴さんはまだ長い煙草を惜しげもなく灰皿に押し付けると立ち上がった。再びこちらに視線を向けた時には、いつもの私が知っている甘い笑みをその口元に浮かべていた。
「お疲れ様でした。彼のわがままにわざわざ付き合ってくれてありがとう。近くにあなたが行きたがっていたパンケーキのお店があります。よければご一緒にどうですか?」
「行きたいけど、さっき遅めのランチを食べたばかりで入りそうにないわ」
最近は朝のテレビで気になるスイーツ情報を見かけても派手に騒がないように気を付けていたのに、どうしてあのパンケーキ屋が気になってるって気づいたのかしら。
昴さんの観察力にびっくりする。
「では、テイクアウトして帰りましょうか? 明日の朝食にでもするとして、気に入ったらまた来ればいい。そのあとは、この辺りでデートでもします?
疲れているなら帰っても良いですし、久しぶりに練習に行くのもいいですね。あなたの着替えなら車にあります」
彼は私の手をそっと取り歩き出す。
「昴さんは何がしたいの?」
くしゃりと彼の手が私の頭を撫でると、私の耳元に唇を寄せた。
「Aさんを存分に甘やかしたい」
「――え?」
ことさら甘い声で、思いがけない返事がきて面食らう。
information10→←information8―沖矢side―
123人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時