disclosure14 ページ30
「今日もコーヒーだけ?」私が問えば
「いや、今日は何か食べようかな。キッチン使っていい?」と返ってきたので、「どうぞ」と伝えた。
「今日の予定は?」昴さんが問う。
「Ladyに、11時過ぎに××ビルの一階エレベーター付近まで来てくれればいい。誰でも自由に入れるビルだから、問題はないはず。そこで、俺に道案内を頼まれて看板の文字を読んでくれないかな。お礼にビルの最上階で美味しい料理をご馳走するよ」
「初対面なのに一緒にランチ? 不自然じゃない?」私は笑うと、食器を片付けるために立ち上がる。
「心配ないって。俺にとっては日常だから。その後2、3一緒に回りたいところがある。15時頃には終わるから、どこかまでシュウに迎えに来てもらうといい。どこがいい?」
俺は土地勘がないから、シュウに場所を指定して欲しいとJが言い出してポケットから地図を取り出した。
「大丈夫。昴さんに来てもらわなくても、私、1人で帰れるよ?」
いくらなんでも、都心の独り歩きでそう簡単に迷子になったりはしない。
食器を洗おうとスポンジを手に取った瞬間、後ろから昴さんに抱きしめられた。
ついさっきまで、そこのテーブルでJと話していたのに。
「Jとはデートできるのに、俺とはできない?」
「そういう意味じゃなくて」
「じゃあ、いい子だから待ち合わせの場所に来てくれる?」
頷けば、頭にキスが降ってきた。
「心配しなくても、君を待たせたりしない」
突然耳元でそうやって秀一さんの口調で日本語で囁くから、心臓がきゅんと高鳴るし頬が朱に染まる。皿を洗う直前で本当に良かった。大切な工藤家の食器を私の不注意で割りかねない。
「もう、待つのは平気――だから」
いつの間にか、昴さんに対して『今日突然いなくなるのでは?』『待ち合わせ場所に来ないのでは?』と感じることは、なくなっていた。
「そうか、それならよかった」
昴さんは身をかがめて私の頬にキスし、手を離す。
Jはまるで何もないかのように、ダイニングテーブルで朝食をとっていた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時