ボディガードは不要です7【沖矢昴】【安室透】 (ページ23)

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disclosure7 ページ23

「J、本当に夕方まで帰ってこないのかな？」

洗濯を終えた私は、書斎にいる秀一さんに日本語で声をかけた。
私はやはり日本語の方が断然話しやすい。

「さあ、どうだろうな？夢中になると時間の経過を忘れる奴だからな。夜になっても帰ってくるかどうか……。どちらにしてもAが気にすることはない。
　急な来客で、君には気を遣わせるな」

煙草を吸いながらパソコンを眺めていた秀一さんは、私の姿を見るとすぐにそれを消して立ち上がった。

「そんなことないよ。
　秀一さんが信頼している人に会わせてくれて、嬉しかった」

「なんだ、『シュウ』と呼んでくれるんじゃないのか？」

第二ボタンまで外して雑に身に纏った黒い開襟シャツ、寝不足を引きずった顔で気だるげに微笑むその様子は無駄に色気が駄々洩れで、それだけで心臓が跳ねる。

「……それは、英語と日本語の違いで……」

逃げ出す前に抱きしめられていた。普段よりずっと強い煙草の匂いが、私の頭をくらくらさせる。

冗談だ、と囁くと私の顎に指をかけ持ち上げた。視線が絡んでさらに心拍数があがる。

「君には隠し事なんてしないと言っただろう。
　それに、君のことは何一つ勝手に調べ上げたりもしていない。せいぜい、GPSくらいだ」

GPSに悪気がなさすぎるのにだいぶ認識の歪みを感じるけれど、それを言及するほどの余裕がない。

ふわりと唇が重なって、再び両腕で抱き寄せられる。

「俺は今でも君のボディガードを続けているつもりだが――。君にとって、俺はそんなに頼りない？」

秀一さんは血の匂いに敏感だし、確かに帰宅時間はいつもよりも遅かった。
朝のランニングから帰宅してキスしたときに、何かを感じ取ったに違いない。

ほとんど寝てるから問題ないと思ったんだけど――やっぱり駄目ね。

「そういうわけじゃ……」

大きな手が私の頭や背中を優しく何度も撫でる。

「君が誰かを助けたいなら、俺に遠慮することはない。
　俺の全てはずっと前から君のものだ」

甘い言葉を紡ぐ彼の低い声はいつもよりもさらに甘く私の鼓膜を震わせ、不安感や警戒心をそっと優しく取り払っていく。

「――違うの。私がまた今日も困っていた安室さんに何もしてあげられなかっただけで。秀一さんに何かをしてほしいわけでも隠しているわけでもないの」

今朝の出来事を、端的に伝えた。