disclosure2 ページ18
安室さんは私を見て、露骨に舌打ちをした。
あまりの感じの悪さに、別人かと思う勢いだ。
「――見て見ぬふりって言葉、知ってます?」
息も切れ切れなのにそんなに強気で言葉を吐かれても困る。
「でも、左腕――血が滲んでます」
「傷が開いただけ――良くあることだ」
良くあることだというのなら、こんなところに油汗流しながら立ち止まっているはずがない。
顔色も悪いし、手を上にあげて右手で押さえている左腕からは、それでも血が滲んでいる。
人通りが少なくたって、誰かに見られる危険性はあるし、安室さんはこの町では有名人だ。
「私でお役に立てないなら、誰かに連絡しましょうか?」
「――タクシーを、呼んでもらえれば」
「わかりました」
私はタクシーを呼ぶ。5分も経てばつくと言われた。
私は持っていたタオルで、傷の上側を縛ってみる。簡単な応急手当のいくつかを昴さんから習っていて本当によかった。
タクシーが来たのを見届けて、安室さんを誘導した。本当はもう少し付き添いたいけれど、それは多分彼の本意ではないのだろう。
無事乗り込んだのを見送った後、私は再び走って家に帰ることにした。
着替えを取りに部屋に戻ると眠っているはずの秀一さんが瞳を開いて、おかえりと言った。
「帰宅したから安心して? シャワー浴びて朝ごはん食べたら戻ってくるね。洗濯くらいはついでにすませちゃうかも」
彼の額にキスしてくしゃっと頭を撫でた後、シャワーで汗を流し服を着替え、1人で朝食を食べていたらトントンと開いているドアがノックされた。
顔を上げればJがいた。今日もダメージジーンズに白Tシャツと言うラフな姿だ。肩よりもやや長い金髪を後ろで一括りに縛っている。
足が長くてスタイルが良いが、「鍛え上げられた身体」という感じではないのは、彼が現場に出る人間ではないからだろう。
年齢は、秀一さんと同じくらいだろうか。
「おはよう、L(エル)。朝から元気だね、さすがティーンエイジャーは違う」
おそらく、LはLadyのエルだろう。
「おはようございます、J。お言葉ですが、一応20代ですよ、私」
「へえ、情報屋の目をもってしても、東洋人の年齢はさっぱりわからんなー」
「コーヒーでも飲みます? それとも、何か食べますか?パンとか簡単な卵料理くらいなら、すぐ準備できますけど」
じゃあ、コーヒーだけとJが言う。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時