夏祭り6 ページ13
ビー玉で栓をされた瓶入りのラムネを飲む。
私にとっては懐かしさを覚える光景も、イギリス人でアメリカで仕事をしている昴さんにとっては目新しさを覚えるのかもしれない。
いつも思うけど、私はどうしてか昴さんが何かを飲んでいる姿がとても好きで見惚れてしまう。こういうのって、何度見ても慣れないんだな。
そして、昴さんはすぐに私が見ていることに気づくので、視線が絡んで余計にドギマギする。
「昴さんがお酒以外を飲むなんて珍しいよね?」と言えば
「コーヒーも紅茶も酒じゃないがな」と耳元に言葉が返ってきた。
「別に、飲んでいいのに。ビール飲む?」と言えば
「この後行きたいところがある」という。
「ほんっと、仲良しだよね。佐藤刑事と高木刑事もこのくらいいちゃいちゃすればいいのに」
と、やや遠方から声がかかる。
「歩美ちゃん!それはお二人に言ってあげて?」
私に言われても困る。あと、昴さん? 子供に見せつけるように頬にキスするのもやめてください。
「歩美ちゃん。暇な大学生と同じようにはできないのよ?」
ほら、通りすがりの佐藤刑事がイライラしている。高木刑事は苦笑しながら捕まえた犯人を連行していた。
良かった。私たちがここで何の疑いもなしに『ただの暇な大学生』と認識されているのであれば、『赤井秀一』の変装は成功と言えるだろう。
背中から私を抱きしめた昴さんが「君のおかげだ」と囁いた。
「歩美ちゃん、あれは見本にしちゃダメなタイプの大人よ? 向こうに行きましょう」哀ちゃんが歩美ちゃんを引っ張って行ってくれる。
「えー、せっかくだから一緒にお化け屋敷探検に行こうって誘ってみたかったのに」と歩美ちゃんが言うのが耳に入った。
時はゆっくり進み、気づけばマジックアワーとなっている。
昼から夜へと世界が移ろう時間帯。
いつもはこの時間帯バタバタしているから気にしないけど、毎日こんなに綺麗に世界が染まる瞬間があるなんて――と、あたりを見回す。
美しい景色の中、すぐそばに昴さんがいるのが嬉しかった。
甘い笑みはきっと、私だけに向けられたもの。
「君を連れて行きたいところがある」――昴さんが唇の動きだけでそういう。私にもちろん異存はない。差し出された手を、迷うこともなくぎゅっと掴んだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時