光に熔ける 【名探偵コナン】

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貴方(？)side


「……なんだぁ、」


初恋は実らないと、誰が言ったのだろう。


最悪な形でとはいえ、確かに私たちは結ばれていた。


私に流れ込んできた数々の記憶を一つ一つ反芻して、また中へと流していく、さながら桜の花が川に流れていくよう。


大好きだった彼の記憶を、今までの感情を。


私への愛を。


何だか情けなくなって、涙がこぼれてしまった、畜生、私にもっと勇気があればこんなことにならなかったかもしれないのに。


あと一歩踏み出す覚悟があれば！


馬鹿だなぁと、もっとうまく付き合えていたらこんな感情いらなかったのになぁ。


馬鹿だなぁ。


なんでさ。


なんで私なんかにあいつを託したんだ。


たっくんは私より強いだろう、私よりずっと頭はいいし、むしろ臆病な私なんて勝てるかどうかも分からないというのに。


悔しかったのだ。


私はもう聴力のないだろう彼に、任せてと言うことも出来ないし、視力を失ったであろう彼に私の最後の姿を見せることも出来ないのだ。


触覚を失った彼に私の温度も分かるはずないし、きっと嗅覚もないのだからこの荒廃した焼け跡の臭いも感じることは出来ない。


味覚がなければ最後の口付けの味も思い出せないだろう。


命が亡ければ意思さえ消えてしまう。


ああ本当に、何でだよ。


私を信じてこの世界を託しただって、冗談じゃない。


ここは私のために神様が用意してくれた世界じゃないか。


君本当は、この世界を愛してもない癖に。


託しただって、まるで君とは私の知っている君と別人の考え方をしているね。


ああ、らしくない。


本当にらしくない。


だったら君は私の知っている君よりずうっとわがままな人間じゃないか。


私だって人のこと言えないけれど、君も大概だよ。


わがまま小僧だ。


わがまま、私の知っている君よりずっと君らしい優しい少年。


君がそんなに優しい人間だなんて知らなかったんだ。

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