489 ページ15
考えていると、周囲で小規模の爆発が、瓦礫が四方に飛ぶのを他所眼に走りながら携帯を触り始める彼女を視界に映す。
多少思案した後、耳にそれを当てる彼女が何ともそれらしい、だがその相手は何とも僕を驚愕させるものだった。
「か、神様、こういう時どうすんの!?」
転生者なんて基本会わないって言ってたのに、とぶー垂れていた、そのふざけた顔の裏には焦燥さえ見られる。
『悪かったって、悪い……』
「どうなっとんの、私、どうすれば」
『……こりゃ動かないとな』
「?今何」
『いい花流、僕の言葉をしっかり聞くんだ、一度しか言わないからちゃんと聞くんだ』
「神様……?」
『君には残り五個の補正がある、いいか、それを使え』
「……」
『時間には気をつけろ、君は生き過ぎたんだ』
「どういう」
『それだけだ、僕から言えるのはもうそれだけなんだ』
君をこのゲームに巻き込んだのはとても後悔している、だが僕はそれ以上に君に幸せになってほしかった。
いいか、このままだと君は死ぬぞ。
電話から漏れる音声をかろうじて聞き取って、理解した、彼もきっと彼女のことを好いているのだということ。
彼女が死ぬことを純粋に悲しんでいること、そして何より。
彼女の生前を知っているということ。
『時間については隣の彼から聞いてほしい、彼はきっと頼りになってくれる筈だ』
「どういうこと、だって彼は」
兎なのだから。
電話は既に切られ、彼女は歩幅を緩めてゆく。
周囲の爆発音が何もなかったように、目の前から色だけが切り取られていくように、そして何故か煤だけが舞い上がってその舞台を作り出して。
「……たっくん、何か知っとると」
私のこと、と心細い声を上げた、僕は頭を抱えた。
僕の正体のことを、神は知っていた。
そして僕はそれを、失念していた。
120人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 517さん» 517様、閲覧及びコメントありがとうございます!長かったでしょう(苦笑)そう言って頂けるととてもありがたいです。更新は停滞気味ですが気長に待って頂けると嬉しいです! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
517(プロフ) - とっても面白くて最新話まで一気に読み進めちゃいました! (2021年3月31日 1時) (レス) id: a380db26d5 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はい。楽しみにしてます。 (2020年10月17日 8時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ひかりさん» 閲覧及びコメントありがとうございます!SCPご存知の方中々いらっしゃらないですよね……。SCPで何か書けたらいいなぁと思っています(笑)改めて、ありがとうございました! (2020年10月16日 23時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - こんなところでSCPを嗜んでいる人に出逢えるとは思ってもいなかった (2020年10月16日 22時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時:2020年3月31日 9時