宇髄天元(ひよ) ページ20
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従兄妹という血縁関係は、その親同士の距離感によっても違いがあるとは思う。
母親同士が姉妹、しかも仲まで良好とくれば子供達はそれこそ、本当の兄妹のように育つことも。
「どーよ大学は」
勝手知ったると言わんばかりに、何の予告もインターフォンすら無しに、その従兄は私の家へと上がりこんだ。
もちろん合鍵で。
今日はたまたまリビングに居たけれど、2階の自室に居る場合はさすがに、数回のノックが為されるようになった。確か、私が中学生になった頃から。
土曜の午後早く、家には私だけ。
「叔母さん達は?」
「何か2人で買い物行くって」
置いてきぼりか、と言われ眉を寄せる。大学生など親に放置される方が、ありがたいのだから。
5つ上の従兄____宇髄天元はソファ、私の隣に腰を掛けた。
『お兄ちゃんも今日休み?』
「土日は基本的にな」
ギシ、と重く沈んだ座面と、すぐ隣から空気と共に伝わってくる熱や香りは、もう慣れ親しんだものだ。
「で?」
『ん?』
「大学どーよ、って聞いただろ」
ああ、と頷いた私に、彼は小さく吹き出す。聞いてなかったんかと小突かれる肩は、痛くはない。
確かにこの前会ったのは、入学式の前だったと。
『まあ普通。でも授業選べるのは楽しいかな』
「オレは美大だったからなあ。やっぱ違えんだろうな、微妙に」
子供の頃から芸術系の才に秀でていた彼は、高校卒業後に美大へと進み、現在は母校で、美術の先生をしている。
で?と聞き返した私に、彼はきょとんとした。緋色の大きな瞳が、子供の頃のように丸くなる。
「ん?」
『いや、何か用があったのなって』
それこそ子供の頃は、何の用がなくとも互いの家を行き来していたものだけれど。
ああ、と思い出したとでもいうように、彼は苦笑する。
「お兄さまが、ご馳走してやろうと思って」
『ごはん?』
「入学祝い。まだ何もしてなかったからさ」
新学期は忙しいとわかっていたから、端から期待などしていなかった。でもいざこうして、そんな風に誘われてみれば。
『いいの?』
「トーゼン。お前の好きなもん、食い行こうぜ」
ほら、と先にソファから立ち上がって、私へと大きな手を差し伸べる。
ほんの2秒だけ躊躇してから、その手を取った。
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ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません
作成日時:2022年9月21日 11時