8 - 2 さざ波 ページ10
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時差ボケとは分かっていても、回りにそう言うわけにはいかない。
そういう訳からか、遠目に見つめるAの表情はやはり暗かった。
泉と真間の距離もそうだけど。
Aとしては、色々思うところもあるようで。
パチッと目が合った瞬間、Aは驚いたように即座に目をそらし
そしてすぐ、取り繕うように笑う。
ずきずきと、何故か痛むのは胸。
「…おうちに帰りたい…」
「何言ってるの、まだまだこれからよォ?」
タオルで軽く顔を拭き、そう言った嵐の隣で
赤っぽい髪は揺れた。
「A先輩、大変そうだな
俺達、個性的な奴らばっかりだから」
「それまーくんが言う、って思ったけど
一応この中じゃまーくんが唯一マシだねぇ」
「自分がマシじゃないって自覚してるのね」
『真緒』は遠目でAと、そのまた遠くの泉と真を見るなり、微笑む。
「楽しそうだねえ、まーくんは」
「…まあ、Trickstarでする仕事は楽しいぞ
毎度毎度、困難は多いけどな」
それを聞いて、嵐と顔を見合せ、互いに笑う。
「アタシ達も
”おうち”が恋しいわねェ」
「…そうだねえ」
海は静かに波音を立てて、砂浜に打ち寄せる。
その上を、オレンジ色の髪の少年は駆けていった。
「ひゃっほう…☆」
「うわ、スバル何やってんだ…!?
まだレッスンあんのに…!」
慌てて制しに行くのを眺め、徐々に暮れる夕日を横目に聞いてみた。
「…ナッちゃんさあ」
「うん?」
「…Aが欲しいものって、何だと思う?」
知るわけがない、その答え。
本人にしか、きっとわからない。
「…、唐突ね
何かあるのォ?」
表情を窺うなり、嵐は少し考える仕草を見せてから
困ったように笑った。
「…”居場所”、とか?」
案外本格的な答えに、返答に詰まる。
「…なんで?」
「…なんでって……
……なんかそんな気がするからよ」
遠目で嵐もAを見つめ、今度は少し寂しそうに笑った。
「何にせよ、困ってるなら頼ってほしいわよねェ
…あの子の一番の拠り所でありたいわ
……アタシ、いいえ、
別れ際、嵐は付け加えて言った。
「見ていて、なんだか寂しそうなのよ
何でかわからないけど
そんな気がする
…気のせいかもね」
そう、最後は困ったように、笑って見せた。
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まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…!!妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー!(*´ω`)ありがとうございます(*’ー’*)ノ (2019年10月13日 11時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています!繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした!これからも頑張ってください! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…!そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
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