検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:71,229 hit

10 - 1 濁流 ページ23

·






「…隠し部屋なの二、そんなに出入りしていたら何も知らない”地上の連中”に勘づかれちゃうデショ、姉さん


…師匠から話は聞いてるけド」





「…渉?」





広い部屋の床には、不思議な魔法陣。



何故かその真ん中にAは座って

少し離れた戸棚から何かを手に戻ってきた夏目は人差し指をくるくると回した。





「師匠は魔法使いだからネ


何でもわかるんだヨ、姉さんもお察しの通リ」





手にした瓶をカラカラと振りながら、夏目はまっすぐAを見下ろし、言った。






「もう時間の問題なんだヨ、姉さん

漸く”この時”が来たんダ


いつかは来るだろウ、”このシナリオに勘づく者の出現”
それガ、偶然にも”彼”だっタ
ただそれだけのことだろウ?」







『まあ』と夏目はため息を吐いて、瓶の蓋を回しながら付け加えるように言う。






「それガ、姉さんには少々悪いことのようだけド?」




「……凛月は多分、秘密にしてって言ったら守ってくれる

ちゃんと、約束は守ってくれるよ
…あの子が約束破ったこと、ないもん」






夏目はそれを聞いて、表情を陰らせ、

蓋を回していた手を止めた。





「…、それが心苦しいんだろウ、姉さんハ


守ってくれるからこソ、”その子”は姉さんの秘密を守ろうト、姉さんと”他の演者”に板挟みにされル

…それに”その子”ハ、心を酷く苦しめられることになるだろうかラ」






緩んだ蓋を開けて、その中身に目線を落とし、夏目は続ける。




部屋の中には、妙な匂いと共に居心地の悪い空気が漂った。






「……、デモ、それが苦しいからっていつまでも逃げていたラ

今までと同じだヨ」




「……それが一番いいと思ってたの

…この世界を変えるのも、私ひとりいれば出来ることだから」






それを聞くや否や、夏目は睨むような鋭い目をAに向けた。


ぶくぶくと、フラスコの謎の液体が泡立つ。






「キミは、囚われのお姫様みたいだネ

…自分からそうなりたいと望んデ」





嫌味のような言葉に

Aも、苦虫を噛み潰したような顔をした。




そしてそのまま反論も肯定もしないAに


夏目は半ば勢い任せに言った。




瞳を揺らせて、瓶を乱雑にテーブルに叩き付けて。






「……いつまでそうしてるのサ」






僅かに、自分の後悔も乗せて。







「…このままじャ、姉さんだけじゃなくにいさんたちモ


……この”シナリオ”に呑まれて死んじゃうヨ」








·

10 - 2 役割→←Story 10『 memory trace 』



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (74 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
189人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…!!妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー!(*´ω`)ありがとうございます(*’ー’*)ノ (2019年10月13日 11時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています!繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした!これからも頑張ってください! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…!そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まひる | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年9月2日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。