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8 F ページ44

参った。

1年担任教師達のちょっとした飲み会に出席し、仕事も残っていたのでアルコールも飲まずに、途中退席で学校へ戻ろうとした時、数年前の教え子に街でバッタリ遭遇した。

手のかかった子だから顔を見た瞬間、すぐに誰だか思い出せた。

たいぴー!と懐かしそうに腕を組まれ、話しかけられれば無下には出来ず、俺は教え子の紗也と歩きながら話をしていた。

そんな中で、突然背後からAの大声が聞こえたものだから、俺はびっくりして振り返った。

てか、なんつーこと言ってんだよ、あいつは。

「相変わらず女子高生泣かせてんだね」

紗也が感心したように呟くから、

「人聞き悪いこと言うなよ、お前まで」

「はいはい、いたいけな女子高生のケアしてくださいね、たいぴー先生」

紗也が俺の背中を叩く。

俺は紗也にごめんと謝ると、紗也から離れた。

俺が近付くと怯えたようにぎゅっと目を瞑るA。

怒られるとでも思ったんだろう。

周りの野次馬の目が気になっていた俺は、Aを車を停めている駐車場に連れて行き、半ば強引に車に乗せた。

助手席からキラキラとした目で運転している俺を見つめているのが痛いほど分かり、思わず苦い笑みが零れる。

おまけに写真撮ってもいい?ときた。

この年代の恋は純度の高い鉱石みたいなものだ。
無垢で、真っ直ぐで、激しい想いは、綺麗で眩しすぎて。

そのひた向きな想いに、汚れきった自分は痛みすら感じる。

俺もあの時、こんな風にあの人を好きになっていたんだろうか。

この時代にしか出来ない、自分の想いだけで輝ける純度の高い恋だからこそ、後から思い返して、儚く、切なく、郷愁を呼び起こすのだと俺は知ってしまっている。

甘くて苦い記憶。

Aが大きな溜め息をつく。
そして、ぎゅっと掌を握りしめ、意を決したように口を開いた。

「太ちゃん、私クリスマスの日、朝まで北山先輩と過ごすの」

え....?

信号待ちしていた俺はAの顔を見た。

Aは真っ直ぐ前を見つめたまま、

「私は太ちゃんが思うより、こんなこと大したことだと思ってないから」

自嘲めいた笑みを溢した。

「ちょっと待て、A」

慌てた俺は近くのファミレスの駐車場に車を停める。

自分でも何をそんなに慌てふためいているのか分からないまま。

「お前、北山のこと、本当に好き、なんだよな」

「うん」

その言葉に傷つく自分。

けれど。

「太ちゃんの次に、だけど」

俺は目を瞠った。

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ましろ(プロフ) - ayachokoさん» た、大したことない(爆)太ちゃんが独りで息巻いてるだけです(爆)(爆) てかそんな思い付かないですよねアクロバティックなこと← (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ぐりさん» うわぁーもう半月経ってますね涙。ご、ごめんなさい;; しかもこの先、しばらくずっと話も動きませんが、どうかお付き合い下さいませヽ(;▽;)ノ (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - mamiさん» だいぶお待たせしてしまい本当にごめんなさいっ(土下座)体調崩して長期療養していて涙 ぼちぼち復活出来そうなので頑張りますね><。。 (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - すごいです、ましろさん…!!脇の下攻めるとかさすがすぎて(//∇//)私が知らない愛し方で啼かせて太ちゃんっ!←違う 自坦のハッピーエンドが少ないましろさんの作品。このお話はどうなるのか…ドキドキ(@_@;)続き楽しみにしてますっ(*≧∀≦*) (2017年11月30日 12時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぐり(プロフ) - もーう息苦しい!!ので、続きを!!どうかよろしくお願いしますー!!笑 (2017年11月28日 23時) (レス) id: ccfaf12877 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2017年10月14日 16時

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