ETERNAL after story

初秋 G ページ37

「ガヤ、婚約したって」

「え、本当に？Aは知ってるの？」

「いや、知らないと思う」

夜中、喉が渇いて１階へ降りていった私の耳に、パパとママの会話が耳に飛び込んで来た。

太ちゃんが、結婚...？

頭の中が真っ暗になった。

嘘...

嘘でしょ！！

私はリビングのドアを思いっきり開けて、パパに詰め寄った。

「太ちゃん結婚するの？」

パパが驚いた顔をして私を見た。

「起きてたのか」

「太ちゃん結婚するの？」

「するよ。挙式は冬だって」

「....」

一気に様々な感情が込み上げて言葉が出なかった。

代わりに一気に溢れ出す涙。

「A、あのな」

困ったように口を開くパパに、ママが目配せすした。

「A、部屋に行こう」

ママに促されて自分の部屋に戻る。

「ショック？」

ベッドに並んで腰掛けたママが私の頭を優しく撫でた。

「うん...太、ちゃんが、好き...だから」

「そうね、そうよね」

ママは私の気持ちを否定も、反対もしなかった。

私は初めてママの初恋の話を聞いた。

報われたけれど、報われなかった恋。
ただ自分の気持ちを押し付けることしか出来なかった若さ故の拙い恋。
自分のことも、相手のこともいっぱい傷つけて、誰からも認められない、後ろ指をさされる恋。

それでもあの人に出逢えて良かった、幸せだったと笑ったママ。

自分の人生に必要だった人だから。
誰に認められなくても、かけがえのない大切な人を愛して、愛された記憶は、自分をいつでも強くしてくれた、そう言って。

「パパも...知ってる、んだよね」

「うん」

「その人のこと、パパよりも...好き...？」

「パパが一番好き」

ママは絶対に嘘はつかない。

だからきっと本当なんだろう。
本当にパパのことを一番愛してるんだろう。

ママは今まで何人の男の人と恋をして愛したんだろう。

初恋の人と、パパだけ？
太ちゃん...は？

ママを見つめる太ちゃんの、いつも優しい目を思い出す。

怖くて訊けなかった。

ママは決して嘘を言わないと思ったから。

「出逢う順番も、状況も、叶う、叶わないも、それは全部自分の運命だから。後悔しないよう、自分の気持ちに正直に進んで行けば、いつか必ず出逢えると信じてね」

永遠を誓える相手と、必ず出逢えると。


私の運命の人。
永遠を共にする人。


それは誰？


もう出逢ってるの？
それともまだ出逢ってないの？

自分の気持ちに正直に進んで行けば、分かるの？


苦しい。
苦しいよ、太ちゃん。


北山先輩....。

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