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「Aっ」

北山先輩の腕の中から抜け出した私は、荷物を抱えて部室を飛び出した。

後ろから先輩が私を呼ぶ声が聞こえたけれど、私は渡り廊下を走り、第一校舎の階段を駆け上がった。

社会科準備室のドアを思いきり開ければ、驚いた顔の太ちゃんと目が合う。

「お前、今ドア蹴破った?」

バタンとドアを閉めて、内鍵を掛ける私に、太ちゃんが一瞬眉を顰めた。

「もうすぐ完全下校時刻だぞ、早く帰れよ」

「太ちゃんっ」

何を言えば良いのか分からなかった。

どうやって今の自分のぐちゃぐちゃな気持ちを言葉にすればいいのか分からなかった。

言い訳?
申し開き?

太ちゃんにとっては、私が誰と何をしようと興味も関心もないかもしれないのに?

「邪魔して悪かった」

太ちゃんが苦笑いして、私に背を向けた。

「教師としては、校内ではあんまりやんなよ、とは言っとくけど」

「太ちゃんっ、私っ」

「A!A、ここにいんの?藤ヶ谷?」

準備室の外から聞こえる北山先輩の声。

「ほら、怪しまれるぞ」

太ちゃんが準備室の鍵を回しドアを開けた瞬間、転がるように中へ入ってきた北山先輩。

「A!」

訳が分からないといった表情で太ちゃんを見る北山先輩に、

「玉森、ほら彼氏が迎えに来たぞ。北山、こいつ動揺してんの、落ち着かせてやって」

呆れたように笑って、太ちゃんは私の背中を北山先輩の方へ押す。

北山先輩がほっとしたように息をついた。

「ごめん焦って。怖がらせてごめん。でも俺、本気だから」

太ちゃんの前でも、堂々と宣言出来る北山先輩の強さが羨ましかった。

誰かを好きだと、胸を張って堂々と言える北山先輩が。

準備室を出た北山先輩が、私に頭を下げた。

「怖がらせたのなら、ごめん。けど、俺の好きは、そういう好きだから」

「え...」

「Aの気持ちも、身体も、全部欲しいっていう好き。人としても女としても好きってこと。だからAもそうなって。俺の心も身体も欲しがって。ゆっくりでいいから」

北山先輩の指が私の指に絡まる。

恋人繋ぎ....

その手を振りほどけなかった。

こんなに太ちゃんが好きでも、北山先輩を拒めないこの気持ちの理由が分からない。

北山先輩のことが好きだから?
太ちゃんへの想いは決して届くことはないから?

学校から駅までの道のりをたわいもない話をしながら歩いた。

北山先輩の見る世界は、強く、揺るぎなく、優しくて涙が出そうになった。

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ましろ(プロフ) - ayachokoさん» た、大したことない(爆)太ちゃんが独りで息巻いてるだけです(爆)(爆) てかそんな思い付かないですよねアクロバティックなこと← (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ぐりさん» うわぁーもう半月経ってますね涙。ご、ごめんなさい;; しかもこの先、しばらくずっと話も動きませんが、どうかお付き合い下さいませヽ(;▽;)ノ (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - mamiさん» だいぶお待たせしてしまい本当にごめんなさいっ(土下座)体調崩して長期療養していて涙 ぼちぼち復活出来そうなので頑張りますね><。。 (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - すごいです、ましろさん…!!脇の下攻めるとかさすがすぎて(//∇//)私が知らない愛し方で啼かせて太ちゃんっ!←違う 自坦のハッピーエンドが少ないましろさんの作品。このお話はどうなるのか…ドキドキ(@_@;)続き楽しみにしてますっ(*≧∀≦*) (2017年11月30日 12時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぐり(プロフ) - もーう息苦しい!!ので、続きを!!どうかよろしくお願いしますー!!笑 (2017年11月28日 23時) (レス) id: ccfaf12877 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2017年10月14日 16時

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