【刀剣乱舞】ﾁｬｱと鳴く鶯に成ったと思ったら女だったんですけど【勘違い】 (ページ29)

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二十七話ページ29

A視点

そうして俺と三日月が仲良く…………は無いな。

俺は三日月に若干引きながら話していると、忘れていた眠気が襲ってくる。

うつらうつら首をかくかく縦に振り、然し何とか起きていようと目を擦る。

「どうした、眠いのか？」

『…………少し、な…………』

「ふむ…………ならば、このじじいの膝を貸してやろう」

…………はい？

なんつったこのじじい。膝？つまり俺が膝枕されるの？？男の堅い太腿に？俺が？なんで？？

マジでマイペースなじじいの発言に、俺は首を傾げまくりだがしょうがない。

だって三日月だもの。

そして何時もなら、ここは『女になってから出直してこいや』で普通に願い下げるのだが。

然しその時、俺は途轍もなく眠かった。

どうしようもなく眠かった。物凄い眠かった。兎に角眠かった。

つまり、もう何でも良いから寝たかった。

『では、借りさせてもらおう』

「おや、意外に何も言わないのだな。少々警戒心が足りないのではないか？」

『男と寝るのは慣れているからな』

兄貴とゲームしてる時に寝落ちしたりしてよく一緒に寝たしな、と俺は思う。

それに三日月が何かする訳でも無いだろ。こう言う事聞くって事は。多分。

三日月は何か考え込む様な表情をしていたが、生憎眠かったので気にも留めなかった。

俺は三日月の膝にごろんと寝転がる。

うん、普通に堅い。まぁ無いよりはマシか。

そう思いながら、俺は待ちに待った深い眠りの中に落ちて行った。

NO視点

「然し、愚かな人間も居るものだ」

夜の色を身に纏うその男は、膝元で静かに眠る女の鶯色の髪を一束掬って口付けする。

静かで悲しそうな口調とは反対に口元は弧を描いており、瞳の中の三日月の様だ。

「この美しい鳥を手籠めにせんとする気持ちはわかるが、傷付けるのは感心せんなぁ。

美しきものは、愛でるべきだ」

すっと髮に口づけを落とす。

それから、風呂上り故に包帯の巻かれていない傷口を、まるで壊れ物に触るかのように、刺激しない様にそっと撫でる。

「俺ならば、傷ついた小鳥を愛し、癒す事も出来よう。

それこそ、誰も居らぬ静かな世界で」

然しまぁ、先ずは信用を得る事からかと薄く笑う。

時間はあるのだ。

少し時間はかかるかも知れないが、待つのは得意だと三日月は云う。

大包平が探しに来て連れ帰るまでの間、三日月はずっと鶯丸の傷口に唇を落としていた。