十二話 ページ14
大包平視点
俺がこの本丸に来てから六月も経つ。
日々怠らず鍛錬を重ね、遂に練度も上がりきった。
然し、未だこの本丸に鶯丸は来ない。
新刀剣が幾ら集まろうとも、鶯丸だけが来ない。
不審に思った俺が主を問い詰め聞いた話によると、一部の本丸にはそれぞれ別に極端に来ない刀剣が居るらしい。
その本丸では解体された本丸の刀を譲り受けたりするらしいが、主はそんな伝手は無いと嘆いていた。
折角俺が本丸に顕現したと云うのに、待たすとはどういう事だ。
俺は少々の怒りを抱きながらも、鶯丸を待っていた。
出会いは、俺が思っているよりも早く訪れた。
その日、随分と早く帰った第一部隊が何やら騒がしく、俺は門を覗いた。
誰か重傷でも負ったのかと門を覗くと、其処には待ち続けた鶯丸が居た。
折れる寸前の重傷を負い、抱えられながら。
其れだけではない。其の鶯丸は明らかに異常だった。
元々細い四肢はさらに細く、白い肌は極上の絹のような滑らかさを持っていた。
胸は大きく膨れ、鶯色の癖のある髪は長く腰の辺りまで伸びている。
早い話が、この鶯丸は女体だった。
だが、それも気にならぬ程に、この鶯丸は美しかった。
この様な状況下だと云うのに、俺の胸の内の何かが溢れんばかりに蠢くような感覚を覚えた。
俺は暫く呆然と考えた。
何故鶯丸がこの様に傷付いている。何故だ。誰が。
其れを考えていたが、余りに簡単に答えは見つかった。
ブラック本丸。
本丸に来て日の浅い者でも知っている。
神を神として扱わない愚か者が運営する本丸だと聞いた。
手伝い札を使い手入れされた鶯丸を見たが、白い肌に痛々しく残る赤紫色の打撲痕などの明らかに敵ではない者に付けられた傷が治らず残っていた。
俺は其れを見て更なる怒りが湧いたが、何とか抑え持ちこたえる。
俺は鶯丸の世話と監視を拝命した。
死んだように眠る鶯丸は三日目にやっと目を覚ました。
感情だけを欠いた状態で。
凪いだ水面のように静かに、能面を貼り付けた様な顔をしていた。
自身の本丸について尋ねられた時だけ瞳の奥をほんの僅かに揺らすだけだ。
有り得ない。
この底抜けに大らかで穏やかな刀が、笑みを浮かべぬ事など在る物かと。
今迄の事でもどれだけ凄惨な目に会っていたのか分かる。
だか、この事は段違いに重い。
俺は決めた。
この鶯を、もう二度と非道な目に会わせないことを。
俺が守ってやる事を。
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リオン♛ - 四十話の仕組み凄いですね❗ (2022年7月28日 9時) (レス) @page43 id: b70e4d72d6 (このIDを非表示/違反報告)
梨の子(プロフ) - 今更ですけど青くして調べるって押したら出てきましたよ!! (2021年7月23日 10時) (レス) id: 52f349caa9 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐教信者(サブ垢)(プロフ) - 彼岸花さん» あれ?なんででしょう……? (2018年10月24日 16時) (レス) id: 787e58ff6d (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 四十話の文字を選択で青くしても見れませんでした… (2018年10月24日 3時) (レス) id: da7e05a086 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐教信者(サブ垢)(プロフ) - 阿国さん» いえいえ、こちらこそこの作品をご愛読下さり有難う御座います! (2018年10月11日 19時) (レス) id: 787e58ff6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐教信者 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月15日 19時