【文スト】危険人物に生まれ変わったので生を謳歌してやろうと思った。勿論後悔も反省も全然していない。

外出が二十七回 ページ29

A視点




中也さんはそうか、と言った。それから手の甲に芝居がかって恭しく口づけを落とす。

お前本当にそういうところって言ってるじゃん………？？




「Aの興味を引くその舞台の役者に酷く妬けるが、今は俺の手の届く範囲にAが居る事を喜んでおくか。」



『本当にそういうところだよお前は！！この！本当に！！そういうところ！！

ていうかお前の手の届く範囲にって比喩じゃ無いだろ知ってんだよ！ドア何個も無駄にしやがって！

………気を取り直して。私は誰も特別じゃないスタイルを崩す心算は無いから♡』




其の言葉に、しかし中也さんは特に気にした風もなく言う。




「それを知ってて全員ありもしねェ寵愛を奪い合うンだよ。」



『パトロンに貢がれてる本人としては割と笑えないレベルで滑稽だけど良いの？

特別にもなれないのに。そこに愛なんて誕生しないのに。燃えないでしょそんな恋。』



「これはもう恋で片付けられる衝動じゃねェんだよ。

七年ぐらい前なら片付けられたかも知れねェがな、これはもう崇拝とかに近ェと思うぜ。」



『えっなにそれこわ………シンプルに怖い………』




ええ………私の知らないところで怖いことが進んで行く………やだ………




その後中也さんの反対を押し切ってどうにかお家に帰った私である。

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