２０ ページ20
.
「はっ、おま、え、え？」
トントンが物凄い勢いで立ち上がる。がしゃん！と、トントンが腰掛けていたパイプ椅子が倒れる音にわたしは思わず肩を竦めた。
トントンの顔はそれはもう熟れた果実のように真っ赤で、これじゃあまるでわたしじゃなくて、トントンの方が恋する乙女のようだ。
はくはくと口を開閉させ、震える指はわたしを指す。見開かれた瞳も小刻みに揺れている。
「そんな浮ついた話、俺は一回も聞いたことないで……？」
「トン氏はAのオトンか。…はー、あの不人気と名高いシャオロンにもいよいよ春が来たか。彼奴は煩いし、馬鹿だし、犬みたいにすばしっこい奴だが、根は優しくて気も配れるいい奴だからな。Aが惚れたと言うのなら、俺は喜んで応援するゾ！」
「…はえ〜、Aと知り合ったんついさっきのくせに、ちゃっかり俺のコメント横取りしやがって、言うことなくなってもうたがな。」
それはもう花が咲いたように満面の笑みを浮かべるグルッペンさんは、わたしの手をやわやわと握りながら、「うちのシャオロンをね、どうぞよろしく！」と裏返った声で言った。
対してトントンは直した椅子に座り込み、生気が抜けたように「お父さんAがお嫁に行くなんて許せません…。」等と呟いている。本当にお父さんのような事を言うな。
生徒会室の外は色鮮やかな声達がざわざわとしている。きっと生徒会のメンバーだろう。
わたしは早く退散しなければ、ここはわたしの居場所でもなければ、もう用もないから。
「…まだ、自覚するには儚い感情なんです。だから、もう少しだけ知らないふりさせてください。…わたしずっと、とんちゃんに守られてきて、他の人たちと接するのは初めてに等しいんです。」
「っ、A…？」
「もうそろそろ、とんちゃんに守ってもらわなくても大丈夫にならなきゃなって、思って。わたしも親離れみたいなものですね！…だから、グルッペンさんも、よかったら、わたしとお友達でいてくださいね。」
「…うむ。そんなこと言われなくても、だゾ。」
わたしの言葉を聞いたトントンの呆けた表情と、底意地の悪そうな笑みを浮かべるグルッペンさんを見て、わたしの頬は勝手に緩んだ。
…またふたりの動きが止まったのは何故だろうか？
生徒会メンバーが次々と教室に入ってくる。
固まったままの学校ツートップから目を逸らし、わたしは足早にその場を去った。
.
殿堂入りありがとうございます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 936人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
。ﾏﾙ(プロフ) - 星空さん» コメントありがとうございます◎わ〜とてもうれしいです！たくさんきゅんを摂取していってくださいね！ゆっくりにはなりますが、更新の方頑張りますので、ゆるっと応援お願いします。 (2020年8月20日 6時) (
レス) id: 67fc3fdd24 (このIDを非表示/違反報告)
星空(プロフ) - もうめっちゃ心臓がキュンってします……！！好きですありがとうございます(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))私もこんな青春したい(´；ω；｀)この小説でドキドキ摂取してます(？)これからも無理せずに更新頑張ってください！応援してます！ (2020年8月19日 3時) (レス) id: df42e0e9d5 (このIDを非表示/違反報告)
。ﾏﾙ(プロフ) - デデドン！さん» コメントありがとうございます◎ゆるゆるになりますがこれからもがんばります…！ (2020年8月13日 22時) (レス) id: 67fc3fdd24 (このIDを非表示/違反報告)
。ﾏﾙ(プロフ) - トドルゴンさん» コメントありがとうございます◎ほんとうですかうれしいです〜！(T . T)きっと心臓きゅって掴んだまま離しません！どうか引き続きよろしくお願いします。 (2020年8月13日 22時) (レス) id: 67fc3fdd24 (このIDを非表示/違反報告)
デデドン！ - めちゃくちゃ文が綺麗で好きです、、これからも頑張ってください！ちゅっ！！ (2020年8月13日 21時) (レス) id: 2c8648c87a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
