儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

彼の世界 7 ページ7

亜嵐「…すみません！
お待たせしました！」


白濱先輩の声を先頭にして、スタッフさんや

バンドメンバーさん、ダンサーさん等々、

GENEの後に続いて総勢20〜30人位の人が

ぞろぞろと部屋の中へ入って来た。


途端に大きいと思った部屋はキッツキツだ。



『完全に場違いだよ…。』


愛ちゃんにこっそり呟く。


愛『アウェイだね、アウェイ。くくくっ。』



驚きながらも愛ちゃんは楽しんでいるようだ。

.

.


ツアーファイナルを東北の地で迎える為、

軽く打ち上げのようなムードの宴会が始まる。



相変わらず私の隣は長谷川君。まだ成人前の

彼は烏龍茶を飲みながら、私にせっせとお肉を

焼いてくれている。



愛『いいね〜、らんぺーじ！カンパーイ！』


『愛ちゃん、飲み過ぎだよ！』


愛『おまえも飲めやっ！』


『飲んでるって！』



絡み酒…。


愛ちゃんはいつの間にかランページの成人組と

何度も乾杯していて、すでにほろ酔い。


隼くんに目配せするけど気付かない。



『はぁ…。長谷川君、愛ちゃん見てて貰って
いいかな？ 私、お手洗いに行って来る。』


慎「はい！自分、見てます！」


『愛ちゃん、お手洗い行って来るよ。』


愛『どーぞー！勝手にやってまーす！』



優しく笑ってくれる長谷川君にお任せして

少し、人とお酒に酔ったのを醒ましに出た。



高級なお店はお手洗いまで高級だ。


鏡の前でリップを直して一息ついた。



暖かい部屋の空気とお酒のせいで、頬が赤い。



少し胸の奥がモヤモヤするのも、

涙なんかじゃなく目が潤みがちなのも、


うん、

…きっとお酒のせいだ。



なのにピアスに触れると、ぽつりと零れた。



『…何の為に呼んだの…？
…誕生日、忘れちゃった？』



こんな風に距離を感じてしまうなら…

ここへ来たこと自体が間違いだったよ。



私に気付いているのかさえ、分からない。



深い溜め息を吐いてから、

気乗りしないままお手洗いを出た。

彼の世界 8→←彼の世界 6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す