儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

きっかけ 6 ページ16

『…。』

奈々『…。』


最初の挨拶を交わしてから、無言…。


私から、何か話しかけるべきだろうか。

でも、…何を、何て？

話したいって言われた方だから待てばいい？


ほんの５分くらいの沈黙が数十分にも感じる。

落ち着かなくて、目線を外の通りに送りながら

無意識に指輪をくるくると回していた。




…唐突に話し始めたのは奈々さんだった。



奈々『……可愛い、指輪ですね。
玲於が、初めから…その指に？』


ハッとして、…でも、静かに頷いた。


ゆっくり目を合わせると、

奈々さんは口元だけで笑っていた。


すぅ、と深呼吸を一つ。


奈々『…お呼び立てして、すみません。
…私、渡辺奈々と言います。元々ダンサーで、
玲於とは、中学の頃スクールで知り合って…
それ以来、ずっと側で見てきています。
それに、…付き合ってもいました。』


『…はい。……大体の事は、知っています。
…大変な時に助けていただいた事も…。』


奈々さんの目線は、話す私の口元と、

薬指の指輪を交互に捉えている。


私達の目は、合いそうで合わない。



奈々『…私、いつもあなたの代わりで。
いえ、違いますね。代わりには…なれてない。
同情しか、貰った事無いのは分かってます…。』



申し訳ないような気持ちはある…。


だけど、奈々さんと玲於の間の事は

私が口を出す事ではないはずだから…。



『…あの…私、…何て言ったらいいか、
分からないですけど…、
…あなたに謝るのは、何か違うと思って…。
でも、…私に言いたい事、沢山ありますよね。』



奈々さんを真っ直ぐ見つめて告げた。



奈々さんは私の指輪をしばらく見つめる。


やっと私と目が合ったと思うと、

鋭い眼差しを向けられていた。



奈々『言いたい事なんて、一つだけです。
玲於と、別れてください。
…これが全てです。』



あぁ、…言われちゃった。



奈々『カオルさんのお仕事上、
この先、玲於を支えていけるとは思えません。
今だって、無理だから寂しい思いさせて、
だから彼、フラフラしてるんでしょ？
GENEだって玲於だって、これからなんです。
…別れてください。
カオルさんは、玲於にはマイナスです。』



…私は、マイナス。


.

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