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結局、長い間をかけて作り上げてきた価値観が、


たった二年やそこらで変わるわけなかったのだ。


こうして、気付いたら大ちゃんが出て行ってから三年が経っていた。


それでもまだ俺は大ちゃんと一緒に住んでいた部屋に住み続けている。


もう今ではなぜ住み続けているかも分からなかった。









あの後彼女とは別れたものの、次の彼女も作ったし、仕事の方も順調で、もっといい部屋に引っ越すことも出来た。


いつでも出て行くことは出来るのに、出て行きたいと思えなかった。









それどころか、部屋に誰かを入れることはなくなり、


大ちゃんと過ごしたこの部屋を誰にも渡したくないような、


そんな執念にも似た気持ちを抱くようになっていた。


机の上に置かれた十五万円にも触ることが出来なくなり、


まるで大ちゃんの代わりのようにそこにあることに安堵するようになっていた。









よくないことだとは自分でも分かっている。


自分で招いた事態だとも理解している。


それなのに、この三年で俺の中に恋情と言うよりは、執着と言っても差し支えない気持ちが募っていき、除去することは難しくなっていった。









最初のうちは連絡を取ろうと手を尽くしたけど、


実家に連絡したところ、むしろ元気でやっているかと聞かれ、


薮や高木、光に連絡しても、一緒に住んでいる伊野尾が知らないのに何故こちらが知っているのかと、不思議そうな顔をされ、


結局現在に至るまで大ちゃんの居場所は分からないままになっていた。









同居を申し出て大ちゃんに受け入れてもらえた時、俺は確かに嬉しかった。


家に帰り大ちゃんがいて、


朝に弱い大ちゃんの寝癖を直している瞬間が楽しくて、


一緒に週末に映画を見るのが何よりの幸せだった。









多分、自分も大ちゃんのことが好きだったんだろうな、と今では思う。


そうでなければ、高々一人の男に失踪されたくらいで


ここまで心が虚ろになる理由が分からない。









あの頃は素直に認めることが出来なかったその感情は、


俺の中で少しずつ大きくなり、この三年の間苦しめ続けていた。









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ほっぺ(プロフ) - 凄く続きが気になります!お忙しいかとは思いますが、更新再開気長にお待ちしてます! (2020年6月30日 22時) (レス) id: 923ca6dc6e (このIDを非表示/違反報告)
やぶありLOVE(プロフ) - 続き気になります!更新お願いします! (2020年3月7日 10時) (レス) id: 406a1fec80 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この小説好きなので更新再開待ってます (2018年8月1日 22時) (レス) id: d204f4b0c0 (このIDを非表示/違反報告)
ありきち - まつりさんのいのあり小説がホントに大好きです! これからも更新待ってます 。頑張って下さい !! (2018年3月22日 22時) (レス) id: 9edaa1908a (このIDを非表示/違反報告)
ま つ り。(プロフ) - はるさん» ありがとうございます!更新遅めですがお待ちください(><) (2018年3月6日 21時) (レス) id: 28c1963f62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ま つ り。 | 作成日時:2018年2月5日 20時

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