繋いだ手10

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あなたside



浦「このシェアハウス型住宅にはコンセプトが
　 あるわけなんだけど。
　 コンセプトは“助け合い"なんだ。」


実「助け合い？」


浦「そう、人と人との助け合い。
　 人との繋がりや、昔みたいに助け合う心を取
　 り戻そうっていうのがコンセプトに含まれて
　 るんだよ。」


今、私達が暮らしているのは都会のど真ん中。


たくさんの人で溢れているけれど、地方から仕事で来ている人や学生、中には家族で、なんて人もいるけれど、一人暮らしなどが多いこの大都会。


実際のところ蓋を開けてみれば、自分の部屋の隣にどんな人が住んでいるのか知らない、というのが現状で。


今私達が住んでいるマンションも、マンション内で人に会っても挨拶程度のものだ。


地方に比べれば他人との関わり合いもほとんどなく、例えば何かあった時に、隣の人に頼ることができるのか、と聞かれたら頼ることなんかできない環境で暮らしている。


そんな現代社会において考えられたのが、このシェアハウス型住宅らしい。


昔の良き時代、ご近所同士で困った事があれば声を掛け合ったり、近くの大人が子供たちを見守っていたりというのが当たり前だったあの頃。


今となってはそんな風景は珍しく、ましてや都会ともなればそんな場面を見ることなんてないに等しい。


江「お前達に声をかけたのは、ちゃんとした
　 理由があるんだよ。」


浦「今子供のいる末吉くん、これから生まれる
　 西島くん、これからそうなる可能性のある
　 與くん、日高は…まぁ置いといて。」


日「部長、そこは何か言ってよ！」


浦「健闘を祈る。」


千「ちょっとなんですかそれ、失礼しちゃう、」


どっと笑いが起こった。


浦「子供を抱えての生活って大変な部分が多いと
　 思うんだ。
　 誰にも頼れずに心を病んだり、1人抱え込んで
　 事件を起こしたり、なんてニュースがあった
　 りするだろ？
　 まぁ、お前達に限ってそんなことにはならな
　 いとは思うんだけど…。」


江「近くに頼れる人がいれば、色んな面で助け合
　 う事ができるだろうし、そうすれば人との繋
　 がりもできていいものになるんじゃないか、
　 ってわけ。」


なんとも奥の深い話と、壮大なプロジェクト。


そんなプロジェクトに、私達が。

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