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夕飯を用意するのに何かお勧めのメニューはないか

今までの事のお詫びとお礼も含め横尾さんに電話した際に聞いた太輔の体調の話は正直、俺が想像していた以上に酷いものだった

ドクターストップ一歩手前

あまりの多忙ゆえにスケジュール調整の余裕も無く、本来であれば短期間でも入院が必要な程に内側はボロボロに弱っていたのだ
距離を置かれてる間、傍に居たのは身体の事を知る数少ない内の一人の横尾さんで

元々少食気味な太輔でも無理なく食べられる様にと色々工夫したメニューを用意してくれていたらしい

それでも食べ切る事も殆ど無く、大抵戻していた

問題無く口に出来ていたのはフルーツや野菜、一口サイズのゼリーをほんの少量

それだけだった。だから病院で点滴や栄養剤を打って貰っていたと

俺の知らない話を知れば知るほど

そんなにも辛い思いをしていた時に傍に居られなかったこと

支えられなかったこと

幾ら本人が隠していたからといって、俺が何か気付いてあげられたなら少しは変わっていたかもしれない

後悔ばかりが頭の中を占める


「北山が隣に居てくれるならもう大丈夫だね」


ごく自然に病室でそう笑った太輔はそれでもやはり、身体の不調をその顔色では隠しきれてなんていなかったから

病室で思わず絆された甘い空気を家では断ち切り、今日は大人しく寝る!それに限る!無理は禁物!

…そうさっきは意気込んだものの、風邪をひいてしまいそうな昨日までとの温度差に結局飲まれ流されてる自分が居た

事実、どうしてもと懇願され今もお風呂で裸と裸の付き合いをしてる状態

湯船の中で太輔の膝の間に座り後ろからしっかりお腹の前でホールドされた腕

上気する顔はお湯のせいか、はたまた肌が直接触れ合ってるせいか

もうどちらが理由かも分からなかった




「…まずはちゃんと体調治さねーと、」

「うん。それは分かってる。渉にも散々怒られた。 …でもね。食事も睡眠も大切なの分かるけどやっぱ俺にとって一番効くのは宏光だから。特効薬なの」




腕が解かれ、くるっと向きを変えて向かい合わせに座らさせる

濡れて無造作にかき上げられた髪

褐色の肌に幾つも付いている水滴

艶めかしく誘う様な唇、優しく見つめてくる切れ長の瞳




「……っ」




無意識的に思わず喉がゴクッと鳴ったのが分かった




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kurumi(プロフ) - aaaさん» 切なくなったりドキドキしたり…そんなお話が書けたらと思っていたので楽しんで頂けていたら何よりです(*´˘`*)私もFさんは月のイメージでした。でも此のKiさんにとっては太陽なんですよね。逆にFさんにとっては…。ありがとうございます!最後までよろしくお願いします (2022年10月5日 22時) (レス) id: 65b4911c20 (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - このお話、いったいどう着地するんだろうとドキドキしながら読ませて頂いてたのでちょっとホッとしてます。Fくんって太陽の太が入ってるのに月のイメージなんですよね。。月の満ち欠けで進むお話素敵ですね。続きが楽しみです。 (2022年10月5日 19時) (レス) @page27 id: 28fb511570 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kurumi | 作成日時:2022年8月4日 0時

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