検索窓
今日:16 hit、昨日:25 hit、合計:86,461 hit

ページ19

*




会えていない期間以上に使っていなかったこの合鍵でもまだ問題無く家に入れるという事実

そこに何の意味も理由も無いのに、

家に入る事までは拒否されていない

そんな都合良い考えがどうしても浮かんでしまう

恐らくはただ単純にこんな状況で藤ヶ谷の留守中に俺が家に来るなんて思いもしないからだろうけど

例えば何れ新しい鍵に変えるつもりならば合鍵も使えなくなるのだから返さなくても問題無い訳だし

…まぁ、このカードキーも一緒に今日置いていくからそもそも面倒な事する必要性自体が無くなるんだが




「…お邪魔します」




家主の居ない、何の返事も返ってこない静かな空間

確か最後に此処に来たのは2ヶ月程前だったか

あんなに通い、歩き慣れた廊下を進んでリビングのドアを開ける




「……っっ」




"藤ヶ谷の家って何かいつも良い匂いする"
"ふふ、そう?"
"…お前の匂い?て感じがして落ち着く"
"じゃぁ北山にリラックスして貰う為にも常に香りにも気を付けなきゃだね"




そこに恋焦がれる存在は居ないというのに

部屋に足を踏み入れただけで包まれる様な大好きな香りが鼻を掠める

…もう、俺を気にしてこの香りにしておく必要も無いのに、なんで…

分からない

本当に、彼奴の考えてる事が分からない

…ただ、今は泣いてる場合でもない

長居すればその分辛さも増すだけ

少し乱暴に目元を擦って溢れそうだった涙を拭う

自宅から持ってきた藤ヶ谷の荷物をソファに置き、此処に置いたままの自らの物たちを回収しようと紙袋を広げる





リビング、洗面所、脱衣所、寝室

順に回る中、こんなにも多くの物を置いていたのかと驚くと同時、一時期どれだけ入り浸っていたんだと思わず苦笑が零れた

まぁそれは、俺の家にあった藤ヶ谷の荷物も変わらない量だったから似たようなもんか




"着替え入れておけば急に来た時も困らないでしょ?北山専用"




寝室の一角に置かれた黒と白のシンプルなカラーボックス

俺の為にと藤ヶ谷が用意してくれたそれは最初二段だったのが気付けば中身と共に三段、四段と増えていた




"これ、肌触りも良いし寝心地最高だよ"
"この前気に入ってたブランケット、北山用に新しいの買ったから此処に入れておくね"




着替えといっても下着や靴下とTシャツ、スウェット何着づつか以外は彼奴がくれた物ばかり




_

☾→←二十六夜月



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (214 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
481人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

kurumi(プロフ) - aaaさん» 切なくなったりドキドキしたり…そんなお話が書けたらと思っていたので楽しんで頂けていたら何よりです(*´˘`*)私もFさんは月のイメージでした。でも此のKiさんにとっては太陽なんですよね。逆にFさんにとっては…。ありがとうございます!最後までよろしくお願いします (2022年10月5日 22時) (レス) id: 65b4911c20 (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - このお話、いったいどう着地するんだろうとドキドキしながら読ませて頂いてたのでちょっとホッとしてます。Fくんって太陽の太が入ってるのに月のイメージなんですよね。。月の満ち欠けで進むお話素敵ですね。続きが楽しみです。 (2022年10月5日 19時) (レス) @page27 id: 28fb511570 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:kurumi | 作成日時:2022年8月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。