朔望月

下弦の月 ページ16

*




宮田、玉森と久しぶりに三人で風呂とご飯に行った後も、全員でのレギュラー番組収録が一日あったが藤ヶ谷の俺に対する態度は何も変わらなかった

仕事以外、プライベートで会う事はもう諦めた

…それでも

ならばせめて心配だけでもさせて貰えないかと、

様子を伺うだけでもと、トークアプリで何度かしてみた連絡は一応既読は付くものの、ついには返信すら来なくなっていた



もう、本当に終わりだ



最後の悪足掻きでもしまだ僅かにでも可能性が残ってるなら、

なんて抱いた希望はあっさり打ち砕かれてしまう

体調不良に早く気付いてやれなかったから？もっと二人の時間を作ってこなかったから？

何度も考えては今更後悔しても意味が無いとその都度自身に言い聞かせてきた言葉たちも、無理矢理飲み込んではまた湧き出てくる

その繰り返しだった

怖くて本人に聞けない、聞いてすらいない分からないままの理由・原因なんて考え出したらキリがないけどきっと、これ以上踏み込む事もしない方がいいだろう

本格的にグループ内での空気を悪くする訳にもいかないから

"公私混同しない"

彼奴は既に覚えてないかもしれない最初に決めた約束も、どんな状況下でも、せめて俺だけでも守らないと意味が無くなってしまう

それは大人としてプロとして、今の仕事をさせて貰ってる人間としての責任だ

そして、同じグループ内で付き合うということ

伴ってそこには"別れた時のリスク"も生じるのだと何故こうなるまで気付けなかったのか…

幸せしか感じなかった日々も決して永遠では無いと分かっていた筈なのに、温かさに心地良さに感覚が鈍ってしまっていたのだろうか




"一緒に歩むのは簡単な事じゃないって分かってる。それでも俺はお前の隣に居たい"




藤ヶ谷から告白された時、まさかそんな夢みたいなことが起こるなんて思わなくて信じられなくて、でも珍しく指先を震わせて緊張しながら真剣に伝えてくれた想いが嬉しくて嬉しくて

二つ返事で受け入れた




_

☾→←☾

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す