影ノ守り人 参 【炎炎ノ消防隊】

玖拾陸 ページ9

虎に帰巣本能はあるのだろうか。





浅草から潜った地下を、迷わず歩いていく。





ここは右、その次の分かれ道は左。




覚えていたくないはずの場所なのに、呼ばれているかのように迷わず進んでいく。






そうやって、入り組んだ道のその先に見えたのが。






「……ただいま、私のいた場所」





つながれていた牢。





記憶にあったものと何も変わっていない。




繋がれていた手枷や足枷もそのまま。





……あぁ、真っ暗だ。






指先に炎をともし、中をさらに見回す。






炎の光でできた私の影以外、目新しいものは見つからなかった。






……影は、私とそっくりだった。






いつもうつむいていて、何もしようとしなかった、昔の自分。






……あぁ、よく見たら焔ビトか。





きっと、この焔ビトは自分自身。





火華大隊長の言っていたドッペルゲンガー。





……どうして、こんなところにいたのかは、わからないけれど。





牢に火を点ける。






ぱちぱち、と何かの爆ぜる音。





牢が明るくなる。





助けて、という形に焔ビトの口が動く。





ぎゅ、と拳を握る。





「……さようなら。落ちこぼれ(わたし)」






コアを壊す。

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