影ノ守り人 参 【炎炎ノ消防隊】

玖拾弐 ページ5

｢……む？姫、オリハルコンを知らないのか？｣







｢いや、知ってる、けど｣






なんで今のタイミングで。





……来ちゃうんだよ、バカ騎士。





｢ヴァルカンが探しに行くぞって言うからな。姫も向かおうじゃないか｣






｢……私は、行かない｣






｢どうしてだ！俺がオリハルコンを手にするその瞬間を、姫に見てもらいたかったのに……！｣






｢私は、姫じゃない！！！｣






……あぁ、怒鳴ってしまった。





ごめんなさい。でもそうしないと、また君に迷惑をかけてしまう。





｢……では、A。オリハルコンを探しに行こう｣






……そういう問題じゃ、ないんだよ。





｢……アーサーは、私が何したか、聞いていないのか？｣




息を呑む音。






｢聞いた｣





｢ならば何故！｣






｢何故とは、なんだ？｣





｢……嫌わないの？｣





｢嫌う？何故｣





……なんで、心底わからない、というような顔をするんだよ。






｢私は、みんなを危険に晒した！！！大恩人なのに、報いることも出来ぬまま、こんなことになって……ッ｣





｢馬鹿者が！！｣





怒鳴られた。






｢……どこがだよ。何か間違えたことを言ったか｣






｢Aはみんなを救ったんだ｣





｢……何を言ってる｣





｢お前が時間を稼いでくれなければ、紅丸が来た時には手遅れだったかもしれない！｣





｢……だけど、｣





｢中隊長もお前に感謝していたぞ！これでもまだ何か言うのか！！｣





｢……じゃあ何故、皆そそくさとこの部屋を出ていく……｣





｢負担になってはいけないから、だそうだ｣






なんで、どうして、





皆そんなに優しいんだよ。

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