影ノ守り人 参 【炎炎ノ消防隊】

佰壱 ページ14

浅草に帰ってきた。





アーサーの両親は久しぶりだから街を散策するのだと。





……何故か、私も一緒に。





「なんで私なんだ、アーサーの方が気心知れてて楽じゃないのか……」





「君の方が土地勘ありそうだったからな。あと話したいことも」






うーん、アーサーの方が浅草に来た回数は多いんだけど。





話したいことがある、と言われてしまえば無下に断ることもできんか。






ぶらぶらと、街を歩く。





街の人は皆気さくで、歩いていると声を掛けられる。





勧められたので炭酸をもらいつつ、尋ねる。





「で、話って何なんだ」





「他愛もない話がしたいだけさ」





本当に他愛もない話しかしなかった。





天気のこと、好物のこと、趣味のこと。






何というか、平和。





ボケそうなほどに。





「なァ、姫さん」




「ん？」






「アーサーのこと、頼むな」





本題の気配。話したかったのこれじゃないのか。





「……なんで私なんだ？」





「アーサーが惚れた女だからさ」






そういえば、どうしてわかったんだろう。






「ピンと来てねェかもしれないが、愛した女に着いてきてもらえるってのは、いいモンなんだ」






ピンとは来ない、けど。





……奥さん、着いてきてくれてるもんな。言葉の重みが違う。






「……うん、任された」





「よし」





じゃあ帰るか、と踵を返した。





……ほんっと、嵐みたいな人。

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