5、王様(花嬪視点) ページ6
目を覚ますと、
隣で寝ている王様が
すぐに目に入った。
こんなに至近距離で寝ていたのか…
と考えれば考えるほど顔が赤くなって
身体中に熱が籠った。
本当に、この方の妻になったんだと実感する。
妻になっただけじゃない。
王族の一人になったんだ。
そう思うと自然と背筋が伸びた。
王様が眠っている間に身なりを整えて、
心も整えて、そっと、王様に声をかけた。
「王様、もう朝ですよ」
と。
すると少し眩しそうに目を開けた。
「おはよう…花嬪」
「おはようございます。王様」
「よう眠れた?」
「はい。とても目覚めの良い朝でした」
「それは良かった」
王様の優しい笑顔に、ときめく自分がいたが
すぐに、その気持ちを誤魔化した。
一夫多妻制の王族とは言え、
私は二番目の妻で、正室ではなく、側室。
一番に愛されるべきは私ではなく、王妃様。
王様に恋心を抱いても、辛くなるだけ。
宮中では、有ること無いことが尾ひれを付けて
噂として人から人へと広がっていく。
自分の少しの間違いが誰を傷つけるか、わからない。
あくまで私は側室で、王様に仕える女人の一人。
少しも間違えてはいけない。
「今日は挨拶回り?」
「そうですね。王妃様、大妃様に挨拶をして
その後、各部署を見て回ろうと思います」
「ちゃんと休むんやで。
今日中に部署回らんでも良いからな」
「お気遣い感謝いたします、王様」
これぐらいの距離。
これぐらいの距離が私には、ちょうど良いんだ。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ