4、出会い(花嬪視点) ページ5
「そんなに堅くならんで、ええで?
今日の儀式だけでも疲れたやろ?」
「お気遣い、感謝申し上げます」
花嬪になって
王様と過ごす初めての夜。
お優しい方だと聞いていたけど
お噂通りの方で安心した。
こんなに方言で話す方とは思わなかったけど…
「こんな喋り方でびっくりした?」
「えっ」
「そりゃ、びっくりするやんな。
でも、これが俺やから、そのうち慣れてな?」
「はい」
緊張して、ほとんど顔が見れていない。
王様を傷つけてはならないからと
儀式の前に爪を整えて、儀式が終わった後に
花嬪らしい柔らかい桃色の衣装を着た。
今日だけで3回も着替えをして、
しかも慣れない衣装で正直、疲れ切っている。
そもそも王妃でもない、側室である私が
これ程、盛大な婚姻の儀を執り行うこと自体、
おかしな話。前例なんて無い。
普通は、内々だけで行うものを
何故、これ程、大きく執り行ったのか。
それは大妃様のご意向だと聞いたけど
私からしてみれば、一度もお会いしていない王妃様に
宣戦布告をしたのではないかと気が気でない。
月派である王妃様よりも
太陽派である私を立てたいのは
この国の悪い風習だと思う。
月派も太陽派も同じ人間で、尊い存在なのに…
そんな中での初夜。
王様と目を合わすなんて私には難易度が高すぎる。
「花嬪」
「はい、王様」
王様へ体を向け、王様の声に返事をしても
顔を上げる勇気は無かった。
そんな私の気持ちを知ってか、知らずか
「っ…」
王様の手が私の頬に添えられて
自然と目が合うようになった。
初めて王様の瞳を見た。
それにドキドキする間もなく
「お、おう、さまっい、いたいっでしゅ…」
「花嬪のほっぺは柔らかいな」
なんて人の頬を弄びながら笑う王様。
そこから必至で離れ
「か、からかわないでくださいませ…」
と、少し拗ねてみると
「ごめん、ごめん」
と、また笑ってくれた。
私の緊張まで解いてくださるなんて
どれだけお優しい方なのだろう。
側室になることに大きな不安があったけど
王様の妻になれたことを嬉しく思える。
それは、きっと、王様の人徳なのでしょうね。
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