30、いたい(真咲視点) ページ31
｢花嬪様を困惑させてどうすんの！｣
久しぶりに会った途端、エミに言われた。
｢なんの話だよ…｣
｢花嬪様が結婚も懐妊も
真咲が心から喜んでくれなかったって
私をわざわざ呼び出して、相談してきたんだよ！｣
｢えっ…｣
思いもよらない言葉に焦った。
わざわざエミを呼び出した？
そんなに気にしてたのか？
｢花嬪様のことが好きなのは昔から知ってたけど
もう花嬪様は王族なんだよ？王様の女人なんだよ？
変な噂が広まったら、苦しむのは花嬪様だよ？
なんで、そんな簡単なことがわからないの！｣
エミに、こんなに怒られたのは初めてだ…
エミは一人っ子だから、
咲のことを本当の姉のように慕っていた。
だから、咲に何かあれば
一番に反応するだろう。
それが今だ。
当然のことだと思う。ただ…
｢なんで俺が花嬪様のこと好きっていう前提なんだよ！｣
｢今更、何を言ってんの！
いつも顔に書いてあったじゃん！｣
そんな、態度に出てた？俺…
愚かすぎるだろ、俺…
｢自覚してなかったのか…｣
エミに頭を抱えられる俺って
いろいろと終わってない？
そんなこと言ったら、余計に怒られそうだけど…
｢花嬪様に真咲のことを探って欲しいって言われた
私の身にもなって欲しい｣
｢大変、申し訳ございません…｣
｢とりあえず、姉の祝い事に慣れなくて
ぎこちない反応になってただけって
花嬪様には伝えとく｣
｢お願いします…｣
咲は、すごく周りを見ている。
それは昔からだ。
母さんのこともあってか、些細な変化には敏感だった。
どうして、それらに自分は含まれていないと
思っていたんだろう…
どうして自分は違うと思ったんだろう…
｢真咲｣
｢ん？｣
｢真咲は、花嬪様とどうなりたいの？｣
｢えっ…そ、れは…｣
どうなりたい…
花嬪様の笑顔を見ていたい。
近くにいたい。
触れられる距離に、いたい…
｢今の関係を壊したくないなら
真咲のすべきことは、わかるんじゃない？｣
｢うん…そうだな…ありがとう、エミ｣
｢うん｣
その日、初めて、エミが笑ってくれた。
それに少し、安心した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
