18、お仕えする人(さくら視点) ページ19
｢花嬪様は人が良すぎます｣
｢だって、ほっとけないじゃない｣
｢だからって側室になって早々に
謹慎になるなんて、良くない例ですよ｣
｢それは、ごめんなさい…｣
私がお仕えする人は優しすぎる。
人の上に立つ者として
誰よりも人を思いやる心があるのは
とても良いことだと思うし、尊敬する。
でも後先考えずに行動するのは良くない。
｢橙摩くんのお姉さんは見つかるかしら…｣
｢どうでしょう…｣
｢んー…せめて出身地さえ、わかればなぁ…｣
橙摩と雅が王宮内をウロウロしていた理由。
それは橙摩の姉を探すため。
幼い頃に親を亡くし、残された橙摩とその姉は
お互い違う家に引き取られた。
橙摩の姉が引き取られた家は
代々、女の子を女官にする家だったらしい。
それを知った橙摩は自ら兵士に志願したらしい。
唯一の本当の家族を探すために。
でも出身地がわからない。
どこの家に引き取られたか、わからない。
姉の名前もわからない。
そんな相手が簡単に見つかるはずがなかった。
途方に暮れている二人のために
花嬪様は王宮内を行き来しやすいようにと
自分の護衛に加えた。
そんな前例なんて無いから
王様、王妃様も考え込んで、とりあえず数日間謹慎。
本当に困った人だ。
｢そういえば、さくらと亜弥は
どうして王宮に仕えることになったの？
自分の意思でどうこうできることじゃないだろうし｣
｢私は女の子が産まれたら女官にするのが
家のしきたりだったので｣
という亜弥に対して
｢私は、たまたま当時の女官様たちに拾われて
今に至ります｣
という私。
いつの間にか家族と離れ、
一人で途方に暮れているところを
現王妃様付きの怜さんに拾われた。
当時は見習い女官だった怜さんが
自分の仕える方たちにお願いをして
私を宮廷女官の道へと導いてくれた。
あのとき、怜さんが先輩女官様たちと
王宮の外に出ていなければ、
たまたま私が、あの場で途方に暮れていなければ
どんな些細なことも違っていたら
私は、今、ここにいない。
見習い女官になった当初は
いろいろ意地悪されたりもしたけれど
怜さんがかばってくれて、
今ではずっとそばに亜弥がいてくれる。
それに側室付きの女官なんて
なかなか出世したとも思う。
あのツラい時間を耐えたから今がある。
かけがえのない今がある。
だから、どんなことがあっても
誰にでも優しく接する花嬪様を支えていく。
そして私を花嬪様付きの女官にしてくださった
大妃様のためにも…
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