消去法。 ページ9
男子テントを移動させる清隆と平田君を、すぐ近くで眺める。
最初はこの2人だけで行われる予定だったのだが、私が途中で手を挙げたのだ。
男子2人で互いに見張ってても、そこが手を組んでしまったら元も子も無い。
ならば私が女子代表の見張り役として、彼等を監視するのはどうか…と。
鈴音さんもそれを提案しようとしていたようで、あっさり同意していた。
まぁ本音は、清隆の傍に居たいってだけなのだけれど。
カンカンと軽快な音を立てて、テントが組み上げられていく。
清隆が、思い出したように口を開いた。
「…しかし、消去法で俺か。」
「堀北さんなりの褒め方だと思うよ、軽井沢さんも合意していたし。」
『あまりフォローになってないよ、平田君。それに貴方の彼女さん、清隆のこと「影が薄くて人畜無害そうだ」って中々の言いようだったし。』
平田君が、曖昧に笑って黙る。
それはまるで自分もそう思ってますって白状しているようなもので、嘘が吐けない性格なのだなと悟った。
ふと、遠くで平田君が呼ばれた。
僕は…と迷う素振りを見せるので、後は私も一緒にやっておくと告げる。
平田君も居なくなり、周囲は私達だけになる。
気を抜いて被っている猫を剥ぎ取りたいけれど、何処で誰が聞いているか分からない。
仕方無く、声を潜めて清隆に話しかけた。
『…どう思う？清隆。』
「何がだ。」
『下着泥棒の件の犯人。』
「お前には、分かってるんじゃないのか。」
『そりゃ、大体の予想はつくわ。かと言って、いきなり吊るし上げようったって根拠も無いし誰も信じないもの。歯痒いったら無いわ。』
「それに、まだ俺達の出番じゃないだろ。もう少し、時期を見てからだ。俺の予想なら、そろそろ一騒動起きる筈だからな。」
『これから起きるであろう混乱を、見て見ぬ振りするってことでしょ？』
「そうだ。」
『あはっ、清隆ってば悪い顔してる。』
「心外な。心底心配してるって表情だろ、どう見ても。」
『それ、清隆流の新しいギャグ？』
「この場で襲っても良いんだぞ。」
『ごめんなさい。』
軽口を叩きながら、テントを組み上げる手伝いをしていく。
と言っても、殆ど清隆が終わらせてしまった。
お疲れ様、と額を流れる汗を拭っていると、背後から誰かが歩いてくる気配を感じた。
咄嗟に距離を取ると、足音が近くなる。
今気付いたと言うように振り返ると、そこには伊吹さんの姿があった。
「ちょっと良い？」
『あら、伊吹さん。』
「大変そうね、Dクラスも。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜 | 作成日時：2024年4月14日 19時
